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水素精製用の透過膜を簡単・安価に作製可能に―パラジウム銅合金を電界めっきでワンステップ成膜:産業技術総合研究所ほか

(2019年3月4日発表)

 (国)産業技術総合研究所は34日、高純度の水素を取り出す水素精製装置用のパラジウム銅合金膜を、電解めっきで簡単に作れる技術を(株)山王と共同で開発したと発表した。従来の成膜法に比べ、高強度な膜を簡略な工程で安価に作製できる。12年内にも膜の事業化を目指すという。

 水素をエネルギー源とする燃料電池車や定置式電池では、高純度な水素を必要とする固体高分子型燃料電池の利用が多い。この高純度水素を得るための水素精製法として金属系水素透過膜が注目され、なかでも高い耐久性と触媒機能を備えたパラジウム銅(PdCu)合金の研究開発が世界中で進められている。

 しかし、従来の成膜法では前処理や薄膜化に複数のプロセスが必要で手間がかかっていた。

 産総研はこの課題克服に取り組み、今回、電解めっきによるPdCu合金のワンステップ製膜技術を開発した。水素精製用の膜には高い機械的強度や水素透過性、均質な膜質などが求められるが、開発チームはPdCuの最適な合金比率や、組成ムラが少なく厚さも均質になる2種の金属の析出法を見出し、従来の圧延法よりも容易で省エネルギー化が図れる成膜法を開発した。

 めっき液中に基板を入れて電気を流すだけで、膜厚20µm(マイクロメートル、1µm100万分の1m )以下の均質な膜を作れる。流す電流の大きさ(電流密度)とめっき時間の制御により、膜厚を調整できる。

 今後は大面積のめっき膜製法を確立し、めっき膜単体としては1~2年以内に、また水素精製装置は3年以内にも事業化したいとしている。