腸内の真菌増加による喘息悪化のメカニズム解明
―アレルギー疾患の治療に新たな道
:筑波大学/米・ミシガン大学

図

肺組織の顕微鏡写真。抗生物質を投与しないマウス(抗生物質(-))に抗原を吸引させた場合に比べ、投与したマウス(抗生物質(+))に抗原を吸引させた場合、好酸球などの炎症細胞の浸潤(HE染色矢印部分)や、粘液産生が亢進(PAS染色矢印部分)するなど抗生物質投与により気管支炎症の悪化が観察された(提供:筑波大学)

 筑波大学は1月16日、米国ミシガン大学の研究者と共同で、抗生物質の服用により腸内の真菌(カビ)が増えると喘息が悪化するメカニズムを世界で初めて解明したと発表した。マウスを使った実験で喘息を軽快させることにも成功した。腸内細菌のバランスの乱れによって起きるアレルギー疾患の新たな治療法につながる可能性があるという。

 

■抗真菌剤などの投与で軽快

 

 腸内細菌のバランスが乱れると、潰瘍性大腸炎などの腸管疾患だけではなく、アトピー、喘息、糖尿病など腸管外の全身疾患の発症にも影響することが近年分かってきたが、どのようなメカニズムで腸管外疾患が起きるかは明らかでなかった。
 研究グループは、5種類の抗生物質を2週間マウスに投与した後、アレルギーを引き起こす物質を吸わせて喘息を発症させ、病態を観察、ある種の抗生物質を投与したマウスはその他のマウスに比べて喘息が重篤になることを見出した。
 そこで症状の重いマウスとそうでないマウスの腸内細菌の状態を調べたところ、喘息症状の強いマウスでは乳酸菌などが減少し、真菌の一種であるカンジダが異常に増殖していた。
 カンジダはプロスタグランジンE2という生理活性物質を産生することが知られている。調べたところ、実際にカンジダが増殖しているマウスでは血液中や肺の気道内でプロスタグランジンE2が他のマウスに比べ2倍近く増えていた。同時に、炎症を引き起こすタイプのM2型と呼ばれる免疫系細胞マクロファージの増加が認められた。
 調査の結果、プロスタグランジンE2が増えると肺内でM2型マクロファージが増え、喘息が重篤化することが確認された。
 これらのことから研究グループは、ある種の抗生物質の服用により腸管内でカンジダが増殖、プロスタグランジンE2が産生され血液を介して肺に到達、肺内でM2マクロファージが増加、これが喘息などのアレルギー性炎症を悪化させる、というメカニズムの解明に成功した。
 さらに、カンジダの増殖を阻止する抗真菌剤、プロスタグランジンE2の産生阻害剤、M2マクロファージの活性化阻害剤などの投与により喘息の軽快が認められたことから、アレルギー疾患の新たな治療の手立てが得られそうだとしている。

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