(独)産業技術総合研究所は3月29日、銅酸化物系セラミックスの高温超電導が電子同士の間で働く電気的な力(クーロン力)によって起きている可能性があることを理論計算で示したと発表した。
超電導は、物質中の電子が2個1組の対になることによって起きることが知られているが、従来の理論では物質を構成する原子の結晶の規則的な振動がこの電子対生成の原因としており、不規則な熱振動が大きくなる一定温度以上になると超電導状態が壊れるとされている。
今回、高温超電導がクーロン力によって生み出される可能性が示されたことで、理論的にはより高い温度で超電導を起こす材料の開発も期待できるという。
金属や合金を極低温に冷やすと電気抵抗が突然ゼロになる超電導現象は、20世紀初頭に発見され、その仕組みについても1957年に発表された「BCS理論」によって解明されていた。BCS理論では、超電導物質を構成する結晶の規則正しい振動(格子振動=フォノン)が媒介役(ノリ)となって電子同士を結びつけ、ミクロレベルでの電子の性質を大きく変えるために超電導が起きるとしている。
これに対し、1980年代に銅酸化物でBCS理論の予測限界を超えた高温で超電導が起きることが発見され、フォノンに代わって何がノリの役割を果たすのかの解明が課題となっていた。
今回、同研究所の柳澤孝・量子凝縮物性グループ長らは、銅酸化物の結晶の中で平面状に並んだ銅原子の電子に注目、電子同士の間で働くクーロン力を考えた理論的なモデルを作り、コンピューターでどのような物質状態が現れるかを計算した。その結果、クーロン力が電子対生成のノリの役割を果たして超電導が発生する可能性が示された。
研究チームは、今後さらに様々な条件を仮定して理論計算を進め、より高温で超電導になる物質を探索する際の指針を明らかにしたいとしている。
No.2011-13
2011年3月28日~2011年4月3日