沿岸地域の地下水調査に新電磁探査システム
―作業効率5倍、広範囲を短時間で効率的な探査が可能に
:農研機構/日本地下探査(2015年10月14日発表)

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CSMT法による電磁探査模式図。斜線部分が電磁探査範囲であり、複数受信器による同時多点受信が可能に(提供:(国)農業・食品産業技術総合研究機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と(株)日本地下探査は10月14日、津波や高潮で塩害を受けた地下水の代替水源を見つけたりする新しい電磁探査法を開発したと発表した。電磁波を用いて地下構造を推定する電磁探査を発展させ、電磁ノイズ処理を高度化させたもので、1日で200ha(ヘクタール)の探査ができ、従来手法のおよそ5倍の作業効率となった。塩分被害のない地下水を地上から短時間で効率的に調べるなど、災害後の農業再開や深層地の水源調査に大きな力を発揮するとみられる。

 

■1日で200haの広域を探査

 

 研究グループは、地下資源を探る電磁探査法の一つである「人工送信水源地磁気地電流法」(CSMT)に着目。これは、塩水が混じった地下水は比抵抗が小さい(電気を通しやすい)ことを利用したもので、1~2km離した電極に交流電流を流して電磁場を発生させ、地盤に生じる2次的な電磁場の強度を離れた場所で測定する。送信源から数km~10kmの範囲で設定できる。周波数を変えることで、電気の通りにくさの比抵抗の細かい分布を推定する。電磁ノイズの多い市街地などでは適用が難しかった。

 開発したシステムでは、送信源から数km~10km の範囲で設定でき、1台の受信器に磁場センサー1つ、電場センサー3つを接続し、これを2式使い同時に6地点での受信ができるようにした。また、全地球測位システム(GPS)を利用した時計を使い送受信器の精密な時刻同期と受信信号のデジタル処理で電磁ノイズの問題を改善、ノイズの多い沿岸地域での計測もできるようになった。

 このシステムの送信信号は、1Hz~8192Hzの範囲で、一般的な地盤では地下50~1000mほどの電磁探査が可能。津波被害を受けた仙台平野南部での実証試験では、6地点同時受信で1日に約30地点、約200ha(ヘクタール)の探査ができた。これは従来手法の約5倍の作業効率となった。

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