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なりたい自分に成るために実践したい「パーフェクト栄養型の食事」(筑波大学 麻見 直美)

(2024年7月01日)

 ここでは、新しさはないけれど、人が長い歴史の中で培(つちか)ったより良い「食べ方」について、どう実践するかのヒントを紹介することとする。

 体と食の関係性を示す「栄養学」が、身体活動との関係性をも視野に入れた「運動栄養学」が、競技成績の向上の視点も加わった「スポーツ栄養学」が、どんどん発展し進化している今であっても、新しい何かを紹介するよりも、もっと重要なことは、「パーフェクト栄養型の食事」の実践を伝えることだと強く思う。

 新しいことがわかればわかるほど、結局大切なことは「パーフェクト栄養型の食事」の実践なのだ。

 我々の周りには古くからその大切さを伝えてくれている習慣や言葉が沢山ある。”一汁三菜(いちじゅうさんさい)”、“主食、主菜、副菜”、“海のものと山のものを揃(そろ)えて食べる”、”食卓に色を揃える”・・・などは、より良く食べる(望ましい栄養素等摂取(せっしゅ)バランスの食事を摂(と)る)ことを伝承してきたのだ。昔から伝わる生活の知恵のエビデンスが今まさに蓄積されていると言えよう。

 

 我々(筑波大学体育系運動栄養学研究室)は、様々な場面でより良く食べる方法として「パーフェクト栄養型の食事」の実践を提唱している。

 全ての人に実践してほしい食事である。「パーフェクト栄養型の食事」とは、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物を毎回の食事で、毎回が難しい場合は少なくとも一日3回の食事を通して揃えて食べることを言う。

 主食(主にご飯、パン、麺類)は、炭水化物を多く含み、生命維持や生活することに必要なエネルギーの源として食す。主菜(肉、魚介類、卵、大豆製品)は、メインのおかずでタンパク質を多く含み、主に体成分の構成源となる。副菜(主に野菜類、きのこ類、海藻類)は付け合わせのおかずで、ビタミン類・ミネラル類・食物繊維を多く含み、体の中で起こる様々な化学変化の調整役を演じる。体の機能調節を行うと言われるのはそのためだ。

 これらは、一度に沢山食べ貯めておけるわけではないので、都度都度の食事で摂ることが大切である。そして、主食・主菜・副菜では不足しがちな栄養素の補給(ほきゅう)のために、牛乳・乳製品(主にカルシウムの補給)、果物(主にビタミンC)を加える。

 

 このようにして日常的に「パーフェクト栄養型の食事」を実践してほしい。そうすることで、食べたものによってつくられ支えられている自身の体をより良く整えることができるのだ。

 朝、食べられなかったものは昼食に追加して、昨日食べられなかったものは早速今日追加して、概(おおむ)ね一週間を通して「パーフェクト栄養型の食事」が実践できれば100点満点である。

 そして「食」の最大の楽しみの一つであろう、ご褒美食やイベント食も大切にしてほしい。ご褒美食やイベント食で「食」を楽しんだら、「パーフェクト栄養型の食事」の帳尻(ちょうじり)あわせをすればいい。食べていないものが何か、食べすぎたものが何かを想いだして、次からの食事で調整すればいい。望ましい栄養素等摂取バランスの食事を実践して、なりたい自分に成って欲しい。 

 

麻見 直美(おみ・なおみ)

筑波大学体育系教授(学術博士)。日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業(管理栄養士)、日本女子大学大学院家政学研究科食物栄養学専攻修了、日本女子大学大学院博士後期課程人間生活学研究科人間発達学専攻修了。2003年より筑波大学体育系に所属、講師、准教授を経て2022年より現職。

「體(からだ)」という字を、専門とする栄養学・運動栄養学・スポーツ栄養学に関する研究、その成果の具現化としての食育(食生活サポート活動)、教育、自身のEnjoy Lifeの軸としてパワフルにアクティブに活動中。