宇宙への入り口、筑波宇宙センターの紹介
(2017年1月01日)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2003年に宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)が統合し、政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関として誕生し、同分野の基礎研究から開発・利用を一貫して行っています。
JAXAは、創立から10年の節目となる2013年に、経営理念を「宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現する」と定め、コーポレートスローガンに〝Explore to Realize〟を掲げました。これは、宇宙航空を科学や技術の探求の場とするだけではなく、防災や産業振興など私たちの安全で豊かな暮らしに向けた、社会課題の解決につながる活動を進めることを意味します。また、JAXAは2015年4月に、国立研究開発法人に指名され、日本全体の研究開発成果の最大化を目指して、科学技術で新たな価値を創出する役割も果たしています。
昭和47年(1972年)に開設された筑波宇宙センターは、JAXAの中核的な事業である宇宙科学(相模原市)、航空機技術の研究開発(調布市)、ロケットと人工衛星の開発と利用運用、宇宙ステーションの利用と有人宇宙活動の推進、基盤的な研究開発のうち、ロケットと人工衛星、有人宇宙活動、研究開発に係る拠点としてJAXA職員の約半数近くの800名が勤務する、JAXA最大のセンターです。研究開発の範囲も広く、衛星やロケットなどの宇宙分野はもとより、電気、機械、情報を含むほぼすべての工学分野に加え、化学や生物学、医学分野も関係しています。一方、これらすべてをJAXA内で行うことは到底できませんので、近隣の研究機関や大学、企業などオールジャパンの知恵や技術と連携することで、宇宙システムを社会や産業の課題解決に活かして行くことを目指しています。
宇宙と言えば、最近の油井、大西、両宇宙飛行士の活躍に見られるように、日本人が日常的に宇宙で活躍する時代となっています。国際宇宙ステーションには、日本が開発した「きぼう」実験モジュールがあり、そこにはさまざまな科学実験装置や観測機器が搭載されています。日本人宇宙飛行士を初め、国際宇宙ステーションに搭乗する世界各国の宇宙飛行士が、ここ筑波宇宙センターでこれら実験装置の操作訓練を行います。実験装置の中には、宇宙環境を利用した材料開発や創薬に繋がるタンパク結晶成長装置など、産業課題の解決に繋がるものもあり、イノベーションの場としてさまざまな分野の研究者や企業の方に広く利用して頂くための取り組みも進めています。ぜひJAXAのホームページを訪ね、新しい宇宙の利用方法をご覧いただければと思います。
さて、筑波宇宙センターでは、できるだけ多くの一般の方々にも宇宙開発に親しんでもらえるよう、衛星やロケットの実機や開発に使用したモデルの展示と解説、バスによる所内ツアーや企画展示なども行っています。年間30万人以上の方が訪問され、年一回開催の特別公開(本年は10月15日に開催)では1日に1万人前後の方がお見えになり、職員を上げて趣向をこらした企画で、宇宙開発を体験してもらっています。皆様の興味に応える、いろいろな宇宙がここにありますので、どうかお気軽にお寄りください。
宇宙航空研究開発機構 理事
筑波宇宙センター所長
今井 良一
今井 良一(いまい りょういち)
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 理事
1981年、宇宙開発事業団(現JAXA)入社。
技術試験衛星III型「きく4号」、Ⅵ型「きく6号」、VII型「きく7号」等の研究、開発に携わる。2013年6月に研究開発本部研究推進部長。2015年4月より現職。