[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

第4期に入った防災科研-防災科学技術イノベーションの中核的機関を目指して

(2016年12月15日)

 平成28年4月から防災科学技術研究所は国立研究開発法人として最初の中長期計画となる第4期7年をスタートさせました。そのミッションは「防災科学技術のイノベーションの中核的機関」となることです。本稿では、防災科研が第4期で何を目指すかをご紹介します。

 「防災科学技術」とは「天災地変その他自然現象により生ずる災害を未然に防止し、これらの災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及びこれらの災害を復旧することに関する科学技術」と防災科学技術研究所法第2条に定義されています。扱う範囲は予防力、対応力、回復力ですが、その基礎として何が起きるかをしっかり理解する予測力が当然必要です。したがって防災科学技術研究所は自然災害に関する予測力、予防力、対応力、回復力のすべてを対象とする幅広い研究を促進して参ります。

 防災科学技術のイノベーションに関する中核的な研究機関として、大学や他の国立研究開発法人、民間研究機関の研究開発成果を含めたわが国全体としての研究開発成果を最大化するために、防災科学技術研究所には次の6つの役割が求められています。
 第1は、「中核的機関としての産学官連携の推進」です。防災科学技術に関する研究開発の「ハブ」として、関係府省、大学・開発機関、民間企業等との連携・協働の強化です。
 第2は「基盤的観測網、先進的研究施設等の整備・共用促進」です。S-netが一部完成し、DONET が海洋研究開発機構(JAMSTEC)から移管され、海陸統合した基盤的地震津波火山観測網の運用が今期からスタートしています。E-Defenseを始めとする大型研究施設の効果的な活用も必要です。
 第3は「研究開発成果の普及・知的財産の活用促進」です。国や地方自治体、民間企業などと共同した研究成果の社会実装が期待されています。大型研究施設そのものが知財であるという認識に立ち、産業界のニーズに応えた性能証明活動を実施します。
 第4は「研究開発の国際的な展開」です。海外の研究機関や国連機関との連携を強化し、対象フィールドとしてASEAN地域を中心にした国際ネットワークを展開します。
 第5は「人材育成」です。教育機関ではありませんので、単体での直接的な試みには限界がありますが、国民一人一人が自らの判断で安全確保行動をとることができる防災リテラシーを向上させる方策の開発は重要な使命です。
 第6は「防災行政への貢献」です。防災科学技術研究所は、災害対策基本法に基づく指定公共機関です。平時の調査研究成果の提供や発信に加えて、災害発生時には関係機関へ迅速な情報提供が求められ、平成28年(2016年)熊本地震では国の現地災害対策本部のメンバーとして災害発生直後から被災地で活動しました。

 防災科学技術研究所が中核的機関として自他ともに認められるために、経営陣として、明確な目標を掲げ、所員の待遇改善に努め、コミュニケーションを活発化することを通して、柔軟かつ効率的なマネジメント体制を確立し、業務の効率化を図ります。引き続き皆さまのご協力をよろしくお願いします。

              国立研究開発法人 防災科学技術研究所 理事長 林 春男

 

林 春男(はやし はるお)
国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長。
1951年東京都生まれ。1983年カリフォルニア大学ロスアンジェルス校Ph.D.。専門は社会心理学、危機管理。京都大学防災研究所教授を経て、2015年10月1日より現職。2013年9月防災功労者内閣総理大臣表彰受賞。文部科学省科学技術・学術審議会 専門委員、日本学術会議連携会員等。「いのちを守る地震防災学」「しなやかな社会の挑戦」など著書多数。