[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

筑波山地域、目指せジオパーク!

(2016年8月01日)

    筑波山塊を取り囲む、つくば市、桜川市、笠間市、石岡市、かすみがうら市、土浦市の6市共同で、筑波山地域ジオパークの認定に向けた活動と審査が進んでいます。 筑波山塊とは、筑波山(877 m・語呂合わせバナナ)を最高峰に、北方に足尾山(あしおさん)(627 m)、加波山(かばさん)(709 m)、燕山(つばくろさん)(701 m)、雨引山(あまびきさん)(409 m)と続き、さらに東へ吾国山(わがくにさん)(518 m)、難台山(なんだいさん)(553 m)、愛宕山(あたごさん)(293 m)へ続く山々、および筑波山から南東へ宝篋山(ほうきょうさん)(461 m)、雪入山(ゆきいりやま)(390 m)、浅間山(せんげんやま)(344 m)へと続く山々を合わせた山地のことで、八溝山地の南部をさし、ちょうど関東平野に突き出たように存在します。また、ジオパークとは、「ジオ(地球)に関わるさまざまな自然遺産、たとえば、地層・岩石・地形・火山・断層などを含む自然豊かな「公園」のことです。山や川をよく見て、その成り立ちに気付くことに始まり、生態系や人々の暮らしとのかかわりまでをつなげて考える場所です。」と日本ジオパークネットワーク(http://www.geopark.jp/about/)では説明されています。

 実は、2年前の2014年にも筑波山地域はジオパークの認定審査に挑んでおり、惜しくも見送りとの結果でしたが、その後1年半の準備期間を経ての今回の再挑戦です。前回は、筑波山塊をなす地下10km付近でできた深成岩の山脈(やまなみ)と海水準変動による台地と低地および湖の形成が、主要なジオ的素材でした。今回は、「関東平野に抱かれた山と湖~自然と人をつなぐ石・土・水~ 」をテーマにしたことからも分かる通り、ジオ的素材に日本一広い関東平野が取り込まれています。関東平野は、国内二位以下の平野の4倍以上の面積をもつ圧倒的な広さなのですが、その広さの秘密には、約2,000~1,500万年前の日本海の拡大と約300万年前以降の日本列島の形成がかかわっています。岩石や地層として直接手に取っては見ることのできない年代に起きたスケールの大きな話をも、将来のガイド達が筑波山から眺める景色を使って聞かせてくれそうだと期待させます。他にも、筑波山塊のすぐ北方にある鶏足(けいそく)山塊(恐竜がいた時代の堆積岩)がジオストーリーとしてとりあげられており、海のプレートの沈み込みに伴う海底の堆積岩の付加作用から、その後に続く筑波山塊となるマグマの貫入までを、一連の地史として語れる魅力を強調しています。

 この7月の後半、関東地方で震度4になる地震が度々ありますが、そのいくつかは、筑波山地域に近い茨城県南部の地下40~50 kmが震源の地震です。まだ記憶に新しい昨年9月の鬼怒川堤防決壊の浸水被害域は、小貝川を隔てたすぐ隣の常総市でした。筑波山に目を向ければ、2012年に大きな竜巻の被害がありました。また、四方の裾野に山麓斜面堆積物が広がり、過去の大きな土石流の存在を伝えます。そのすべてが、科学的に説明できることばかりではないのですが、大きな災害が起こりうる場に私たちが住んでいることを認識するには十分です。筑波山地域の人々はもちろんのこと関東の都市圏の人々が、筑波山地域に訪れ、自分たちが住む場のジオの状況を、楽しいだけじゃない様々な知識として持ち帰り、日々の生活を再点検して備える。生活を守る防災についての学びと実践の場としても、筑波山地域は、活躍してくれそうです。

 最後に、筑波山地域ジオパーク構想についてのテーマやジオストーリーおよび今回の申請書の他、関係するイベントの紹介などは、筑波山地域ジオパーク推進協議会のホームページ(http://tsukuba-geopark.jp/)から入手することが可能です。ぜひご覧ください。

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住田 達哉(すみた たつや) 
国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター主任研究員。専門は密度に関しての地球物理。地質標本館への所内出向を機に、ジオネットワークつくば、筑波山地域ジオパーク推進活動へもかかわる。