[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

革新的な技術を実社会へつなぐ、産業技術総合研究所

(2017年2月01日)

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、日本の産業や社会に役立つ革新的な技術を創出し、それを事業化に繋げて実社会にイノベーションをもたらすことを目的としています。全国10か所の研究センターで約2,300名の常勤研究職員が、約1,500名のテクニカルスタッフや700名弱の事務職員、それぞれ約200名のポスドクや招聘研究員と共に、活動しています。この内、約4分の3の職員が、つくばセンターに所属します。また、職員数とほぼ同数、毎年5,000名弱の企業や大学の研究者が、産総研に滞在して職員と共に研究開発を行っています。

 その沿革は古く、1982年の地質調査所や1981年の電気試験所の設立に遡ります。2001年には、それまで技術分野や地域ごとに別れていた工業技術院の15研究所を、産総研に統合しました。現在、持続可能な発展に向けて、イノベーションの創出と共に、地球温暖化やエネルギー問題、少子高齢化の急速な進展など、世界共通の課題解決が求められています。これらの課題に対し、産総研は、「豊かで環境に優しい社会を実現するグリーン・テクノロジー」、「健康で安心・安全な生活を実現するライフ・テクノロジー」、「超スマート社会を実現するインフォメーション・テクノロジー」を目標の三本柱に掲げ、研究開発を進めています。
 
産総研は、ほぼ全ての産業技術分野を対象としていますが、自らが持つ技術的強みを伸ばし、それをより多くの産業界が利用できるように、2015年度に研究組織を次の7つの領域に再編しました。環境負荷低減を図りながら創・蓄・省の三つエネルギー技術を体系的に研究する「エネルギー・環境領域」、②健康長寿社会の実現のための産業技術を創出する「生命工学領域」、③人工知能や人間計測評価などの人間に配慮した情報技術を開発する「情報・人間工学領域」、④産業競争力や課題解決の源となる革新的部材・素材を提供する「材料・化学領域」、 IoTInternet of Things)社会に向けてセンシングや電子デバイス、ネットワークの技術を開発する「エレクトロニクス・製造領域」、⑥地質情報の集積とこれに基づく様々な技術開発を行う「地質調査総合センター」、⑦長さ、質量、時間などの物理標準と標準物質の整備および計測・分析技術の開発を行う「計量標準総合センター」。

 産総研は自ら研究開発を進めるだけで無く、イノベーション創出の中心となるように、企業を始め、国内外の大学や地域の公設試と積極的な連携を進めています。共同研究やコンサルティングの他、産総研が共用施設として提供している研究施設をどなたでも利用できることに加え、産総研の施設を使って作製した自社サンプルを出荷・販売できることも、その一例です。また、産総研つくばセンター内にある地質標本館やサイエンス・スクエアは、産総研の活動や成果を、常時、展示しています。毎年、7月後半土曜日の一般公開日には、小中学生を中心に約60,00名の方が、来所されます。できるだけ多くの方々に、様々な目的のために産総研を活用いただくのが、私どもの願いです。

                          

産業技術総合研究所 副理事長
つくばセンター所長
金山 敏彦

金山 敏彦(かなやま としひこ)
国立研究開発法人産業技術総合研究所 副理事長
1977年 工業技術院 電子技術総合研究所入所、産業技術融合領域研究所 アトムテクノロジーグループ長、産業技術総合研究所 次世代半導体研究センター副研究センター長、ナノ電子デバイス研究センター長などを経て、2010年4月 産業技術総合研究所 理事、2014年7月より現職