RISTEXにおける研究公正調査(および研究倫理審査の動向調査)のご紹介
(2022年9月15日)
はじめに
RISTEXは、社会課題解決に向けた研究開発のファンディングに加え、広く「社会の中の/ための科学技術」に資する基礎情報の提供や、今後の研究開発につながりうる議論の基盤を提供するような試みを、RISTEX自身が実施する調査活動によって展開しています。その一環として、社会課題解決やイノベーション創出などを目的とする研究開発における研究公正の検討を始めるべく、2021年度より研究公正調査を開始しました。また、関連する調査として、2020年度には新興技術の研究開発プロセスにおける研究倫理審査のあり方の検討に向けた、研究倫理審査のあり方を検討するための動向調査も実施しています。
研究公正調査(2021年度~)
https://www.jst.go.jp/ristex/internal_research/research-integrity/index.html
■背景・目的
2021年度より、第6期科学技術・イノベーション基本計画が施行され、人文・社会科学と自然科学の知の融合による「総合知」を活用した課題解決やイノベーション創出がますます重視されています。分野を横断する「学際研究」や、学術界を超えて社会のなかのステークホルダーと共に研究開発を進める「トランスディシプリナリー研究(学際共創研究)」といった越境型の研究への期待が高まるなか、こうした研究における研究公正の検討や取り組みも適切に推進していくことが重要です。
これまでRISTEXでは、「科学技術イノベーション政策のための科学」研究開発プログラムにおいて、公正かつ責任ある研究活動を実践するためのガバナンスのあり方などに関する研究開発をファンディング事業として展開してきました。また、設立当初より社会課題解決や社会実装に向けた学際研究やトランスディシプリナリー研究を推進してきました。こうした背景のもと、2021年度より学際・トランスディシプリナリー研究を対象とした研究公正調査を開始しました。
■活動内容
本調査では、責任ある研究活動(Responsible Conduct of Research: RCR)や適正な研究行為(Good Research Practice: GRP)といった、公正な研究の自発的な推進に資する議論の活性化や具体的な政策提案を目指しています。その際、一般化したルールや認識の共有が十分でない学際的・共創的な研究の現場に着眼し、どのように研究の公正性を担保しうるかを考察するための情報を収集し、分析の結果をまとめて発信しています。RISTEXでは、新興科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues: ELSI)や責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and Innovation: RRI)も扱っていますが、こうした概念も視野に入れ、広く「社会の中の/ための研究」における公正性の議論を推進していく予定です。
■「学際・超学際研究における研究公正に関する調査」(2021年度)
第1回目の調査、「学際・超学際研究における研究公正に関する調査」では、今後の調査の展開を見据え、以下を実施しました。
まず、学術界における研究活動の実態を、成果発表や相互批判・評価の場や機会を提供する学協会と、研究活動の実質的な場である研究室の2つを対象として調査し、学際・超学際研究における研究公正の課題や取り組みについて情報収集しました(調査①)。さらに、社会課題解決などを目的とする研究開発に、研究者と共に携わる、社会のなかのステークホルダーが求める研究公正性とはどのようなものかを把握、理解するために参考となる先行事例などの情報収集を実施しました(調査②)。本調査の報告書および調査①アンケート調査データを、さまざまな方に活用いただけるようRISTEXウェブサイトにて公開しています。ぜひご覧いただき、フィードバックをお寄せください。
学際・超学際研究における研究公正に関する調査(2021)
https://www.jst.go.jp/ristex/internal_research/research-integrity/survey2021/index.html
新興技術の研究開発にかかる研究倫理審査の動向調査(2020年度)
https://www.jst.go.jp/ristex/internal_research/elsi/research-ethics/index.html
研究公正調査に先立ち、2020年度には新興技術の研究開発プロセスにおける研究倫理審査のあり方の検討に向けた、研究倫理審査の動向調査を実施しました。新興技術の進展は、研究開発から社会実装までのスピードが非常に速く、人・社会に与える影響が不確実かつ多義的であると同時に、圧倒的なインパクトを持つことに特徴があり、科学技術と社会との関係深化や相互作用の重要性はますます大きくなってきています。とくに新興技術においては、社会受容性を高めることのみならず、研究開発のより早い段階から、予見的にELSI/RRIに取り組むことが、リスクマネジメントやイノベーション創出の観点において重要です。そこで、本調査では、国内の現状把握と、今後検討すべき課題や主要論点の抽出を目的として、「ゲノム編集・ゲノム合成技術」「食肉培養技術」「デジタルファブリケーション技術」の3つをケーススタディに取り上げ、それぞれの技術や分野が内包する倫理的課題の特徴なども踏まえながら、研究倫理審査に関する国内の取り組み状況について調査を行いました。詳しくは上記のサイトをご覧ください。
国立研究開発法人 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(JST-RISTEX)
広報担当