[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

SDGsの実現に向けて経産省の未来の教室が行われています

(2022年6月09日)

 

  東京理科大学は「エネルギーの未来を描く:カーボンニュートラル社会実現のために」というSTEAMライブラリーコンテンツを教材として制作しました。

 経済産業省は、科学技術への支援はもちろんサイエンスコミュニケーションの促進や次世代層教育への支援として、「未来の教室」STEAMライブラリーを開設しています。STEAM※1とは、(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(人文社会・芸術・デザイン)and Mathematics(数学))のことで、世界共通の教育改革のキーワードとされています。2030年を目標に世界中で取り組まれている、SDGs※2(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)の実現には、科学技術だけが進んでも難しく、それを扱う人間の側の学びも大切です。SDGsのどういう問題をどういうふうに解決していくかをコンテンツ上で学び、SDGsの実現を目指していこうというものです。

 STEAMライブラリーのコンテンツは、従来ホームページでの情報提供型のタイプのものとは異なり、学習活動を行う参加者にディスカッションのきっかけを与え、探究活動ができるように配慮されています。

 

  東京理科大学が制作したコンテンツのコンセプトは、次のようなものです。

 

 エネルギー問題と環境問題は一人一人が取り組むべき問題であると同時に、解決には国民の総意としての主体的行動が求められます。コンテンツを活用して学習者の認識を深め、学習者と家庭や省庁や国、電力会社等、関連諸機関の間でPDCAサイクルをうまく加速させて問題の解決への糸口とすることです。

 エネルギーや環境の問題を解決するのはなかなか難しいですが、解決しようという姿勢をしっかりと示すことはお互いにできるのではないでしょうか。

 本コンテンツでは、エネルギー政策の必要性を把握し各発電方式を自主的に学んで利点と課題について理解を深め、自分なりのエネルギーミックスを主体的に考えてもうことを目指しています。自分たちの居住地というローカルで小さな部分ではどのようなエネルギーミックスが最適なのか話し合ってみたり、範囲をローカルな部分から広げていって、例えばシティー、国、あるいはアジアやヨーロッパといった地域、最終的には地球全体としてどのように捉えていくのかが大切です。

 ただ、地球全体についてグローバルという言い方をすると、総論賛成、各論で微妙に反対ということがよく起こります。日本なら日本、アジアならアジアなど、何らかの区切りを設け、うまくはめ込んでパッチワークのようなことを考えていく必要があるかもしれません。それを実現するためには、世界へ出て日本の立場をきちんと主張しながら世界各国と交渉していけるのが真の社会的リーダーだと思います。社会的リーダーとなる人材を育てることを目標に、STEAMライブラリーコンテンツ「エネルギーの未来を描く:カーボンニュートラル社会実現のために」の制作に取り組みました。

 具体的には、科学、政策や行動への学習に参加したみなさんの自発的な問いを促すということです。そこで、エネルギー資源の確保の仕方、エネルギー資源の確認埋蔵量や変換効率、災害時の対応、価格変動、排出するCO2、国家間での対応、個人でできることなど、さまざまな切り口でエネルギーの問題を捉え、問いと調べを並立して探究する構造にしてあります。

 

 

【参考】

・※1  未来社会の創り手を育む「STEAMライブラリーVer.1」を公開します(経済産業省HP)

・※2  SDGsとは?(外務省HP)

「エネルギーの未来を描く:カーボンニュートラル社会実現のために」(東京理科大学)

 

川村 康文(かわむら やすふみ):
 東京理科大学理学部第一部物理学科教授、北九州市科学館スペースLABO館長、(社)乳幼児STEM保育研究会理事、1959年、京都市生まれ。博士(エネルギー科学)。
歌う大学教授(youtube.com/channel/UCkvlkwzpeJByKw5BA4m5ZRA/featured)みんなが明るく楽しくなる「ぷち発明」基礎とした「かわむらメソッド」を提唱!
 専門は、STEAM教育、科学教育、サイエンス・コミュニケーション。高校物理教師を約20年間務めた後、信州大学助教授、東京理科大学助教授・准教授を経て2008年4月より現職。大学院は理科学研究科科学教育専攻所属。
 2022年4月より、北九州市科学館スペースLABO館長を兼任。
 サイエンス・レンジャー。「温暖化星人から地球をまもる宇宙船にっぽん号のたたかい」の公演は200回を超えている。
 慣性力実験器Ⅱで平成11年度全日本教職員発明展内閣総理大臣賞受賞(1999)、平成20年度文部科学大臣表彰科学技術賞(理解増進部門)をはじめ、科学技術の発明が多く賞も多数受賞。論文多数。著書は、「世界一わかりやすい物理学入門」「世界一わかりやすい物理数学入門」「理科教育法」(講談社)、サイエンスコナンシリーズ監修(小学館)など多数。