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どこに置いてもスマホを充電

(2023年11月15日)

研究グループが提案した無線電力伝送システム
(提供:ポカレル研究室@九州大学)

 生活に欠かせないスマートフォンですが、ほぼ毎日充電が必要で、そのたびに充電ケーブルをつなぐのはけっこう面倒なものです。ケーブルレスの充電器もありますが、置き台の上の正しい位置に置く必要があります。

 このような面倒を避けるためスマホをデスクの上に置くだけで無線電力伝送によって充電できるシステムが開発されました。ただ従来の方式ですと、装置を扱いやすくしようと小型化すると伝送効率が低下し、スマホの位置や向きを正確に合わせないと充電効率が低下します。

 そこで、九州大学大学院システム情報科学研究院のポカレル ラメシュ教授の研究グループとモハメド アルアララー外国人特別研究員らのグループは、新たにメタサーフェスと呼ばれるデバイスを開発し、電力の無線伝送を効率化し、方向合わせ(アラインメント)も容易にすることに成功しました。

 メタサーフェスとは、磁力線を制御する能力を持つ人工誘電体(電気が流れることで極性が分かれる物質)のことで、これを送信機と受信機の間に置くことで磁場を制御することができ、無線による電力伝送距離を大幅に伸ばすことができます。また同時に、ミスアラインメントの問題も解決することができました。

 研究グループの示すデータによると、メタサーフェスが無い場合は約4cmの距離での伝送効率は8%ですが、メタサーフェスを間に入れることで約10倍の78%まで向上させることができたといいます。

 また、メタサーフェス無しでは伝送距離4cm程度が限界だったのですが、メタサーフェスを通すと6cm程度まで離しても約70%の効率で電力を送れるといいます。

 この研究成果は、10月17日に米国の雑誌「IEEE Transactions on instrumentation and Measurement」に掲載されました。

研究グループが提案した無線電力伝送システム
(提供:ポカレル研究室@九州大学)

 

 今回の技術が実用化されれば、スマホをデスクのどこにでも適当に置くだけで充電ができるようになりますから、使い勝手が大きく向上します。またペースメーカーなどの体内埋め込み型の医療機器を体外から充電できるので、バッテリー交換のために手術を行なう必要がなくなります。その他、将来登場するさまざまなワイヤレスデバイスへの応用が期待されます。

 

【参考】

■九州大学プレスリリース

どこでもいつでも無線で電⼒伝送可能な技術

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。