デジタルツインを活用して 安全に道路を横断できるロボットを開発
(2025年3月01日)
人と同じように道路を安全に渡るロボットが開発されました。自動運転カーが実用化されつつある現在、道路を横断するくらいロボットにもできそうですが、これがけっこう難しかったのです。なぜなら、将来、人の仕事を代替すると考えられるロボットには、人の場合と同じような高い安全性が求められるからです。今後ますます進行していく少子化の流れの中で、物の運搬・輸送・警備など多くの仕事がロボットに任(まか)されるようになっていくでしょう。
そんな時代に向けて、道路を安全に渡れるロボットの技術を開発したのが、鹿島建設株式会社、株式会社ハイパーデジタルツイン(HDT社)、羽田みらい開発株式会社、芝浦工業大学の研究グループです。
研究グループは、実際の道路や建物などに見立てた環境をコンピューターの中に作り、ロボットが実際に移動している場所の3D環境情報をリアルタイムでデジタルツインとして構築しました。そして、その情報をロボットに送ることで、ロボットに搭載されているカメラやセンサーなどの死角になっている場所の情報を与えます。これによって、離れた場所や建物のかげにいて見えないクルマや人などの位置と動きを理解し、人と同じように危険の予測・回避を行います。
デジタルツインとは、現実世界の情報をデジタル技術によって収集し、仮想空間にリアルタイムで同じものを再現する技術のことです。

鹿島が開発した複数のロボットを連携制御するロボット統合管制システムと、HDT社開発のリアルタイムで構築される3D空間情報のデジタルツインを連携させ、クルマや人の動きを察知し、人のアシストを必要とせずにロボット単独での安全歩行を実現したのです。
研究グループは、羽田空港に隣接する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」において、安全に道路を横断するロボットの自動制御の実証実験(2023年10月~2024 年2月)を行い、有効性を実証しました。

近い将来、人混みとクルマの交通が混在するリアル空間で、人に混じって違和感なく行動するロボットをみかけるようになるかもしれません。
【参考】
■鹿島建設株式会社プレスリリース
車や人との衝突を未然に防ぐ 道路横断におけるロボットの自動制御に成功
-デジタルツインを活用し、大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITYⓇ」にて実証-

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。