[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

人の歴史と品種改良 ~大豆を例に~

(2017年5月15日)

 庭や空き地で、「カラスノエンドウ」という植物を見かけたことがありますか?カラスノエンドウは他の雑草にツルをからませながら生えています。紫色のキレイな花を咲かせ、やがて黒い莢(さや)に種をつけます。この莢は、ちょっとさわるとパキッとはじけて、中の種が飛びちるという特徴があります。これはカラスノエンドウにとって、子孫をより遠くに飛ばして生き残るための戦略であると言えます。
 でもこれが、種をとるためにせっかく育てた植物だとどうでしょう。欲しかった種がどこかに飛んでいってしまっては残念ですよね。
 カラスノエンドウの親戚である大豆も、同じように莢がはじけてしまう特徴があります。大豆を収穫する時は大きな機械を使うことが多いですが、機械が当たると大豆が莢からはじけ飛んでしまうのです。せっかく育てた大豆が収穫されずに地面に落ちてしまうのはとてももったいないことです。
 
 
 
 
 そこで、莢がはじけにくい大豆を作るための品種改良が行われ、この性質はなくなってきています。これで、機械で収穫しても莢がはじけて飛んでいってしまう心配はなくなりそうです。
 
 
 また、大豆の祖先は、カラスノエンドウのようにツルをまいて生える性質があります。アサガオを育てたことがある人も多いかもしれませんが、ツルをまく植物には支柱を立ててやる必要があり、それを広い畑で行うのはとても面倒です。大豆は、長い品種改良の歴史の中で、ツルをまく性質がとても弱くなっています。それによって、人間が育てやすい姿になってきたのです。
 こうした品種改良は、大豆だけでなく多くの植物でも行われています。「最近の果物や野菜は食べやすくなった」なんてこと、聞いたことはありませんか?これも、より甘く、食べやすくするための品種改良が進んできたことが、大きな理由です。
 私たちは、品種改良を通して生活を豊かにしてきた歴史があるのですね。
 
 

うさまめ(ペンネーム)

「なるほど~」「そうなんだ!」身の回りにはそんな不思議がいっぱいです。
広く科学に携わってきた経験を生かし、農学を中心に幅広くまめ知識を紹介します。