厄介な水草は波の高さを参考に駆除せよ!
(2019年7月02日)
南アメリカなどが原産の水草のオオバナミズキンバイ(写真)は、元々日本には分布していませんでしたが、2007年に和歌山県で初めて確認されました。拡散を防止するために、野外に放つことをはじめ、栽培や移動などが禁じられる「特定外来種」に指定されていますが、各地の湖や沼に分布を拡大。琵琶湖では2009年に発見されて以降、急速に分布を拡げました。
このままでは本来の生態系に悪影響を及ぼしかねないため、滋賀県は年間4億円もの予算を投じてオオバナミズキンバイの駆除に取り組んでいますが、オオバナミズキンバイは非常に生命力の強い水草で、駆除しきれずに残った葉や茎から再び繁茂するため、駆除は追い付いていませんでした。そこで京都大学地球環境学堂の田中周平准教授らの研究グループは、限られた予算で効果的に駆除を行うため、オオバナミズキンバイが生えている場所を予測する方法の開発に取り組みました。

2015年に琵琶湖の湖岸にある132の植物群落、118ヘクタールもの広大な面積の調査を実施。胸まである長靴(胴長)を履いて入っていけるところでは自分の足で歩き、胴長を履いても入っていけないところではボートに乗って移動しながら、自分の位置が示されるGPS装置を参考に位置情報を記録していきました。併せて深さを測定して、その日の琵琶湖の水位と照らし合わせることで調査した場所の波の高さも明らかにしました。
その結果、波の高さが平均で18㎝以上になると推定される場所ではオオバナミズキンバイは繁茂しなかったのに対して、8㎝~18㎝だと湖岸に近い場所に限って繁茂し、8㎝以下だと湖岸から離れた場所でも繁茂することが分かりました。波の高さとオオバナミズキンバイが繁茂するかどうかの関係が分かれば、琵琶湖のどこにオオバナミズキンバイの群落ができるかを予測できるようになるでしょう。
その予測をもとに研究グループはカラー135ページの冊子『琵琶湖岸における特定外来種オオバナミズキンバイ ポテンシャルハビタットマップ』を50部作成して配布しました(図)。 この冊子を参考にすれば闇雲にオオバナミズキンバイを探すことなく、高い確率で繁茂している場所を狙うことができるので、効率的に駆除できるようになると期待されています。

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記事執筆:斉藤勝司