地震のゆれをお墓で測る、カメラで知る
(2021年11月01日)
11月5日は「津波防災の日」です。「津波防災の日」は、江戸時代末期(1854年)の11月5日(旧暦)に安政南海地震(M8.4)という大地震が発生したことにちなんでおり、東日本大震災の教訓より津波から国民の生命を守るために制定された法律で定められています。
この地震では、和歌山県に大きな津波がおし寄せました。濱口梧陵(はまぐち ごりょう)という人は、にげおくれた人たちのために高台のイネに火をつけ、にげる方向を示して人々の命を救いました。この話は「いなむらの火」として今も伝えられています。
津波は、海域で地震が発生したときの海底の盛り上がりやしずみこみにより、その周辺の海水が上下に動くことで引き起こされます。海水面の動き(上下動)が大きいと、沿岸に達する津波も大きくなります。
このため、地震が発生したとき、気象庁では、震源の場所や深さ、地震の規模(マグニチュード)をできるだけ早く、正確に調べ、津波が発生する危険性やその大きさを発表します。
テレビやラジオ、インターネットなどで知らされる【震度】は、以前は人が感じたゆれの強さや地震後の周囲の建物のこわれ方などから決定していました。
これは、地震を測る機械が全国各地に設置されていなかったためです。
しかし、地震が発生した後、それぞれの土地がどのくらいの強さでゆれたか、地震のゆれによってどうなったか、を知ることは昔から重要でした。
例えば、古い時代に大きな地震が発生すると、建物などがどのようにこわれたかの調査とあわせて墓地の調査を行っていました。
どうして墓地の調査をしたかというと、日本式のお墓は、3段程度の石台の上に○○家などと記された石(竿石(さおいし)や棹石(そせき)と呼ばれます、以下「竿石」と書きます)が乗っており、古いものは固定されておらず、単純に積み上げただけでした。このため、墓地が地震のゆれを受けると、竿石がたおれたり、台から落ちたりします。
また、竿石の多くは、高さが60~80cm、はばが25~30cmの直方体と大きさがだいたい同じであるため、ゆれの強さが同じであれば、たおれたり、台から落ちたりする竿石の数はほぼ同じになります。もちろんその数は、弱いゆれでは少なく、強いゆれでは多くなります。
(現在のお墓は、石同士が固定され、竿石がたおれたり、落ちたりしないようになっています)
このように、地震が発生したときには、墓地の竿石の状態を調べて、その土地のゆれの強さを知る手がかりとしていました。
一方、地震が発生したときにテレビを見ると、街などが地震でゆれている最中の様子を映し出していることがあります。
これらの映像は、各地の天気などを知るために設置された、無人で24時間動いているカメラによるものですが、映像を見るときには少し注意が必要です。
天気などを知るためのカメラは、より遠くの様子が分かるように高い建物の外側にぶら下がるように付けられていたり、棒の上に置かれていたりことが多くあります。
しかし、地震が発生すると、建物や棒自体もゆれますし、ぶら下がったものはブランコのようにゆすられます。そのため、このような状態のカメラが映し出す映像には、カメラ自体のぶれも入ってしまうことがあります。すなわち手ぶれ状態の映像ということになります。
その結果、一見、街が強くゆれているように見えても実はカメラがぶれているだけの可能性があります。
映像の中の建物自体が大きくゆれているか、人々がしゃがみこんだりしていないか、などを見てみると、実際のその土地の様子を正しく知ることができます。
長屋 和宏(ながや かずひろ)
国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研) 道路地震防災研究室
私たちの生活を支える橋などの土木インフラの大切さを知ってもらうために、出前講座などを通じて国総研の活動を分かりやすく発信しています。
特に防災分野では、小中学生の皆さんと一緒に、様々な視点で勉強しています。