[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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成分を分離する技術「クロマトグラフィー」とは?

(2018年6月15日)

 医薬品開発や食品の検査、さらには犯罪捜査に至るまで、さまざまな分野で活躍する分析技術に「クロマトグラフィー」があります。クロマトグラフィーは、ギリシア語で色を意味する「クロマ(Chroma)」と記録を意味する「グラフォス(Graphos)」が名前の由来で、ロシアの科学者・ツヴェットにより1906年に発明されました。

 植物学者だったツヴェットは、植物にはどのような色素が含まれているのか知りたいと考えていました。植物の色素は光合成に欠かせない大事な成分で、クロロフィル(緑色)やカロテン(赤色)などたくさんの種類があります。しかし当時はまだ、「植物にはいろいろな色素があるのではないか」という推測がなされている程度でした。

 ツヴェットは、炭酸カルシウムを詰めた筒をつくり、そこに植物をすりつぶした液体を注ぎ、さらに石油エーテルを流し込むという方法を試しました。すると、最初は1色だった液体が少しずつ分かれていき、最終的にはオレンジ色、黄色、黄緑色、緑色の4種類の色素が分離されたのです。これがクロマトグラフィーの始まりです。
 
 現在では、液体だけでなく、気体の成分を分離して調べるなど、多様な手法が開発されています。また、ごく微量にしか含まれていない物質まで検出できるようにもなりました。いずれも専用の装置や薬品を必要とするため家庭で試すことは困難ですが、1つだけ手軽にできる実験があります。それは「ペーパークロマトグラフィー」を使ったインクの分析です。

 ペーパークロマトグラフィーでは紙を使います。インクの分析では、ろ紙やキッチンペーパーを使うと良いでしょう。ろ紙に黒や青のサインペンで印をつけ、水を吸わせると… どんな色に分離するかは、やってみてのお楽しみです。

 
          

学研プラスSTEAM事業室 西脇秀樹

 

ペーパークロマトグラフィーが試せるキット
自由研究おたすけキット『色のふしぎを調べよう』
 水性ペンの色を分離したり、CMYKの4色のカラーシートを重ねて色を合成したりして、色のひみつに迫れる。さらに、付属のガイドブックで「色の三原色」や色の心理的な作用についても学べる。対象は小学校3年以上。価格:1200円+税
https://hon.gakken.jp/book/1575064600