[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

摩擦によって静電気をとりだして発電するスマートなタイヤ

(2019年8月15日)

今回開発されたタイヤ組み込み用摩擦発電機
(写真提供 / 関西大学 システム理工学部機械工学科教授 谷弘詞)

 自然エネルギーを利用した発電には、太陽光や風力などいろいろな方式がありますが、中でも振動摩擦発電は、大きな電力こそおこせませんが、日常生活の身近なところで広く応用できる発電方式として注目されています。

 このたび、関西大学システム理工学部の谷弘詞教授は住友ゴム工業(株)と共同で、タイヤに取りつける摩擦発電機の開発に成功しました。

 開発したのはタイヤのゴムの内面に取りつける小型・薄型の摩擦発電デバイスです。デバイス内部は、波状になった2枚の帯電フィルムを重ね合わせ、その両側を電極で挟んだ構造になっています。振動による圧力が加わると帯電フィルムどうしがこすれ合い、一方が負(マイナス)に、もう一方が正(プラス)に帯電します。

 車が走り出すと、タイヤも回転しますので、発電デバイスが地面の方に押しつけられるたびに、圧力による摩擦で電力を生み出します。発電できる電力はわずかなものですが、電気を貯めることによって、外部の機器と通信ができるレベルのワイヤレス信号を送信できることを確認しました。

 このデバイスは、ゴムと樹脂製のフィルムがベースになっていますから、柔軟で軽量であり、タイヤの回転によっておこる変形にも耐えることができます。

 タイヤと外部がワイヤレスでつながることで、タイヤをスマート(賢い)なIoT(モノのインターネット)デバイスとして活用することができます。デバイスにセンサーを取りつけることで、走行中のタイヤの空気圧・温度・摩耗状態などをネットワークを通してモニターできるので、安全で効率的な走行に役立ちます。また、自ら発電するので、バッテリーを取り換える作業が不要な点も大きなメリットです。

 この摩擦発電デバイスは、タイヤ以外への応用範囲も広いと考えられています。例えば、靴底に入れるインソールに取りつけて歩行発電をしたり、機械の軸受けに取りつけて摩擦発電をするなどの応用が考えられています。これらのデバイスにセンサー機能を持たせてIoT機器として使うと、靴を履いている人の健康状態に関する情報を集めたり、ベアリングなどの回転軸受けの摩耗具合・回転の不安定さ・回転音の変化などから、故障をおこす前に部品を交換できるなど、安全性と経済性の向上に大きく貢献します。

 

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記事執筆:白鳥敬 
https://kodomonokagaku.com/