[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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災害にまつわる数字

(2019年9月15日)

9月1日は「防災の日」です。また、9月1日をふくむ1週間は「防災週間」です。「防災の日」、「防災週間」は、約100年前の大正12年9月1日に関東地震(関東大震災)が発生したこと、古くからこの時期に台風が日本に上陸して災害となってきたことから、過去の災害を忘れないように定められました。

地震や台風などの災害を引き起こす自然現象がくり返し発生することは、よく知られています。それでは、例えば「地震」について、どのくらいの確率で我々は大きな地震を受けているか、その確率は高いのかを交通事故と比べて考えてみます。

警察庁の発表によると、平成30年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日までの期間)の国内の交通事故による死傷者数は、約51万5千人です。日本の総人口は約1億2600万人ですから、平成30年度の1年間では、日本に住んでいる人の245人に1人(0.41%)が交通事故にあってしまったことになります。

一方、大きな地震(震度6弱以上)にあった人を数えてみましょう。
平成30年度に日本国内で発生した地震のうち、震度6弱以上を観測したものは、平成30年9月6日に発生し、最大震度7を観測した「平成30年北海道胆振東部地震」をはじめ、4回発生しています。

この4つの地震で震度6弱以上を観測した市町村に住んでいる人の数を合計すると約170万人です。
(厚真町では、平成30年度内に震度6弱以上の地震が2回観測されていますが、重複カウントはしていません)

交通事故と同様に日本の総人口あたりの割合で考えると、平成30年度の1年間では、日本に住んでいる人の74人に1人(1.35%)が震度6弱以上の地震を経験していることになります。

なんと、交通事故の3倍近くの数字です。

平成30年度に発生した4つの地震のうち、平成30年6月18日に発生し、大阪市北区他で震度6弱を観測した「大阪府北部を震源とする地震」は、大都市の近くで発生しています。このため、大きな地震を経験した人の数は、平成30年度が特別に多い可能性があります。

それでは、地震を経験した人の数を過去10年間の平均で計算してみます。

平成21年4月から31年3月までの期間に、震度6弱以上の地震を経験した人の数を先ほどと同じように数えると約1,230万人となります。1年分の平均では約123万人。同様に日本の総人口あたりの割合では、毎年103人に1人(0.97%)が震度6弱以上の地震を経験していることになります。

確かに平成30年度は過去10年間の平均より高い数字ですが、交通事故と比べると地震にあってしまう可能性はかなり高いことが分かります。

「えっ?、本当?、交通事故は身近で発生することもあるのに」と思うかもしれませんが、交通事故では1度に多くの人が巻きこまれてしまうことはほとんどありません。一方、地震はひとたび発生すると、何十万人もの人達が同時に経験します。例えば、「平成30年北海道胆振東部地震」では、札幌市内だけでも約26万人が震度6弱以上を経験しました。身近で見聞きすることは無くても国内では毎年多くの人が大きな地震を経験しています。

日本に住んでいる限り、大きな地震にあってしまう可能性は非常に高いです。

いつ地震が来ても困らないように日ごろの備えをしましょう。

 

※日本の総人口は平成30年10月1日現在の数字です。地震発生時の各市町村の地震経験人数は、それぞれの地震発生の直前に行われた国勢調査に基づいています。このため、正確な地震経験人数とその割合にはなっていません。

※イラストに描いている宝くじの数字は、ジャンボ宝くじでの全発売本数に対する1等(7億円)の本数の確率です。

長屋 和宏(ながや かずひろ)
 国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研) 企画部 主任研究官(つくば科学教育マイスター)
私たちの生活を支える橋などの土木インフラの大切さを知ってもらうために、出前講座などを通じて国総研の活動を分かりやすく発信しています。
特に防災分野では、小中学生の皆さんと一緒に、様々な視点で勉強しています。