白ナスのおはなし
(2016年9月01日)
突然ですが、みなさんは「白ナス」を知っていますか?
私たちがふだん見ているナスは、濃い紫色と紺色を合わせた「茄子紺(なすこん)」とも言われる、しっかりとした色がついています。しかしこの「白ナス」は、その名の通り真っ白なナスです。一体どのようなナスなのでしょう。
一般的なナスは、アントシアニンという色素を持っています。アントシアニンはブルーベリーやブドウなどにもふくまれているので、独特の紫色の色素だというのが想像できるでしょう。アントシアニンは紫外線から身を守るために備わっている機能で、ナスにとっては日焼け止めクリームのような働きをします。
一方、白ナスは、このアントシアニンを持っていないため白い色をしているのです。紫外線から身を守る色素がないかわりに、しっかりとした分厚い皮を持つことで、自分の身を守っています。
この白ナスを切ってみると、切った直後から切り口が茶色く変色していきます。これは、ナスに含まれるクロロゲン酸という抗酸化物質が、空気中の酸素と反応した証です。料理では「灰汁(あく)」と言われる物質で、通常のナスにも含まれています。ただし、普通のナスの場合は紫色に見えるアントシアニンを持っているため、あまり目立たないのです。
また、お湯の中にいれて加熱するとさらに変色します。これはクロロゲン酸の水に溶けやすい性質や、周囲の糖と反応して褐色(かっしょく)に変色する性質、酸化による変色など様々な理由があるようです。白ナスをあまり変色させないように料理するには、水をあまり使わない蒸し料理や、レンジ加熱調理が良いようです。
「ぼけなす」という言葉は「色つやのあせたナス」が語源と言いますが、世界中には、薄紫や緑色、そして白といった様々な色のナスがあります。必ずしも濃い紫をしているナスだけが良いナスではないのですね。
ねこたけ(ペンネーム)
役に立つこと、立たないこと。いろんなことがあるけれど、とにかく「知らないコト」を「わかった!」にたどり着くまであれこれ考えるのが好き。得意分野は「キッチンサイエンス」。身近な「科学」を、わかりやすくお伝えします。