絶滅していなかった! 幻のランが79年ぶりに再発見
(2018年1月01日)
小笠原諸島だけに自生するランの一種、シマクモキリソウは非常に数が少なく、父島では1939年以降見つかっていないことから、すでに絶滅したのではないかと考えられてきました。唯一、生き残っていることが期待される南硫黄島でも、1936年の調査で採集されて以降、シマクモキリソウの生育を示す確実な証拠はありませんでした。そのため環境省のレッドデータブックでは、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」を示す「絶滅危惧1A類」に分類されています。
このように絶滅が心配されているシマクモキリソウの生存を確認するため、首都大学東京、東京都、日本放送協会(NHK)は連携して2017年6月に南硫黄島で調査を行いました(写真1)。標高700m付近に広がる雲や霧が頻繁に発生する雲霧帯でシマクモキリソウらしき3株を発見し、採集していました(写真2)。しかし、この時点では花が咲いていなかったため、同じクモキリソウ属に分類されている、形態のよく似たスズムシソウやセイタカスズムシソウとの判別ができず、本当にシマクモキリソウであるかどうかは確かめることはできませんでした。
ただし、スズムシソウやセイタカスズムシソウとは花の色や開花時期が異なることから、花を咲かせることができれば、シマクモキリソウであるかどうかを確かめられます。そこで、ラン科の専門家がいる国立科学博物館筑波実験植物園に委託して栽培を試みていたところ、栽培条件下で花を咲かせることに成功しました(写真3)。
遺伝子の詳細な解析も行われた結果、スズムシソウやセイタカスズムシソウと近縁であるものの、両種の遺伝子と大きな違いがあることも判明。間違いなくシマクモキリソウであることが確かめられました。解析によって明らかになった遺伝子の違いは、日本の本土から遠く離れた小笠原諸島にのみ分布しているからこそ生じたもので、シマクモキリソウが独自の進化の道を歩みつつあるのだと考えられています。しかし、日本本土から絶海の孤島である小笠原諸島に移動したのかは明らかになっておらず、この謎を解明するためにも、生き残っているシマクモキリソウを手厚く保護して、種を存続させなければなりません。
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記事執筆:斉藤勝司
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