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葉の水滴は、昆虫にとって栄養豊富なエサだった!!

(2020年11月15日)

イチゴの葉から排出された水滴。(写真:保谷彰彦)

 多くの植物では、葉の縁に水孔(すいこう)という微細な孔(あな)があります。水孔は葉脈の先端とつながっていて、そこから植物体内の余分な水が排出されます。 朝、草木の葉の先端にみられる水滴は、たいてい水孔から排出されたものです。この排水現象は、古くから多くの植物で知られていましたが、他の生物に与える影響については謎に包まれていました。

 このほど、ラトガース大学(アメリカ)、バレンシア農業研究所、バレンシア大学(共にスペイン)の研究グループは、水孔からの排出液は、ハチ、スズメバチ、ハエを含む多くの昆虫にとって、栄養豊富なエサとなっていることを明らかにしました。この成果は『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(英国王立協会紀要)』に掲載されています。

 研究グループは、最初に、排出液には炭水化物やたんぱく質などが含まれていることを確かめました。多くの昆虫種にとって必要不可欠な栄養が含まれていることから、水孔からの排出液は単なる飲み水ではなさそうだと推測されました。

 次に、ブルーベリー畑で、草食性、寄生性、捕食性の昆虫で実験をしました。すると、葉からの排出液を与えた昆虫は、対照として水を与えた昆虫に比べて、寿命が延び、繁殖力が高まったのです。そして、排出液はシーズンを通して存在していることもあり、集まる昆虫の種類や数が変化し、害虫(草食性の昆虫)から植物を守る有益な昆虫(寄生性のスズメバチや捕食者の昆虫など)の数が約2倍に増加したのです。

 今回の研究により、葉からの排出液が昆虫にとって栄養豊富なエサであることが、世界で初めて明らかになりました。昆虫にとって重要なエサとなる花粉や花蜜などは、限られた季節にしかありません。一方、葉からの排出液は、花粉や花蜜などが不足しているときでも昆虫にとってのエサとなります。つまり、いつでも食べられて、栄養のあるエサというわけです。

 今後、葉からの排出液を活用すれば、作物への害虫の被害を抑えることもできるかもしれないと研究グループは考えています。葉からの排水現象は、コメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、ソルガム、トウモロコシ、タバコ、トマト、イチゴ、キュウリなど、多くの作物でも知られています。さらなる研究に期待が高まります。

保谷 彰彦(ほや あきひこ)
文筆家、サイエンスライター。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。専門はタンポポの進化や生態。著書に『有毒! 注意! 危険植物大図鑑』(あかね書房)、『タンポポハンドブック』(文一総合出版)、『わたしのタンポポ研究』(さ・え・ら書房)、『身近な草花「雑草」のヒミツ』(誠文堂新光社)など。2021年度から中学校の教科書『新しい国語1』(東京書籍)に「私のタンポポ研究」が掲載予定。
http://www.hoyatanpopo.com