[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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衛星どうしをレーザー光で結ぶ「光衛星間通信」に成功

(2024年11月01日)

 地球環境のセンシングなど、宇宙から地球を観測する技術の重要性が増しています。とくに近年、高度2,000km以下を周回する低軌道衛星から地表の植生や大気の状態等を観測する用途が広がっています。

 また災害によって、地上のインターネット網が損傷を受けた場合などの緊急時に対応させるために、宇宙にまで拡張したインターネット環境が求められています。そこで必要となるのが、宇宙空間で衛星と衛星が通信を行う衛星間通信技術です。

 

 このたびJAXAは、7月に打ち上げられた最新の先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」(高度628km)と静止軌道上(高度約3万6,000km)にある「光データ中継衛星」(2020年打ち上げ)に搭載されている「光衛星間通信システム(LUCAS、Laser Utilizing Communication System)の間で、1.8Gbpsという高速での光衛星間通信に成功したと発表しました。

 使用したレーザー光の波長帯は1.5μm。これは地上で使われている光ファイバー通信で用いられている周波数帯と同じなので、高い汎用性を持っているといえます。通信試験は「だいち4号」とLUCASに搭載された光通信機器との間で、互いに相手を捕捉・追尾できるようにコントロールし、高速光通信が可能であることを実証しました。

 このとき「だいち4号」とLUCASの距離は4万kmほど離れていたといいます。光通信のメリットには高速通信が実現できる他、送受信用のデバイスが小型化できることがあげられます。従来のように電波を使った通信では比較的大きなアンテナが必要でしたが、光通信では小さなデバイスですみます。また、レーザー光は直進性が強いため、秘匿性に優れています。

 

 低軌道衛星と静止軌道衛星を高速通信でつなぐことにより、地球上のより広い範囲を高解像度で長時間観測できます。従来の同様のシステムでは1日の通信可能時間は1時間程度でしたが、今回のシステムでは9時間に増えます。今後は、衛星間の距離や位置関係が光通信に及ぼす影響を評価し、実用化を目指すといいます。

 衛星間の光通信は、アメリカのスペースX社のスターリンク衛星がすでに行なっていると発表しており、今後海外との競争がますます激しくなっていく分野です。日本もこの分野で負けないように急ピッチで技術開発を進める必要があるといえます。

光データ中継システムの概要
「だいち4号」で取得された画像データが光データ中継衛星を経由して地上局に伝送される様子。「だいち4号」と光データ中継衛星間の衛星間回線は光通信、光データ中継衛星と地上局の間(フィーダリンク回線)は電波(Kaバンド)が用いられます。
(画像提供:宇宙航空研究開発機構 https://www.jaxa.jp/press/2024/10/20241008-1_j.html)

 

【参考】

■宇宙航空研究開発機構プレスリリース

光衛星間通信システム(LUCAS)と先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)間での世界最速「通信速度1.8Gbps」の光衛星間通信に成功

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。