謝罪するロボットは1台より2台の方が効果的
(2023年4月15日)
飲食店などで食事を運ぶロボットの姿をよくみかけるようになりました。コロナ禍でこの流れに拍車がかかり、さらにこれからは少子化等によって労働者不足になりますから、ロボット給仕がますます増加していくと考えられます。そのような社会になると、問題になってくるのが、ロボットがミスをしたときの対応です。ミスをしたとき、ロボットがどのような態度をとればお客さんに受け入れてもらえるのか。それを研究したのが、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の岡田優花さん・木本充彦さん・飯尾尊優さん・下原勝憲さん・塩見昌裕さんたちの研究グループで、研究成果が米国科学雑誌『PLoS Oneオンライン版』に掲載されました。
人間ではない機械のロボットがどのように謝罪すれば、適切な対応と言えるのか。ロボットには「心」がないので、言葉と身振りで表現するしかありません。研究グループは先行研究を参考にして、複数のロボットがいっしょに謝ることで、人がロボットの謝罪を受け入れやすくなるのではないかという仮説を立てました。
研究グループはこの仮説を検証するために、ロボットのレストラン店員が客の前で注文された料理を落としてしまう場面の動画を用意し、ウエッブ上で被験者がどのように感じたかというデータを収集しました。使用したロボットはソフトバンクロボティクスのPepperです。被験者は21歳から49歳までの203名(男女同数)で、このうち有効な168名の被験者のデータをもとにして解析が行われました。
その結果、ミスをしたロボットだけが謝るよりも、2台のロボットが一緒になって謝る方が効果的だということがわかりました。2台で謝る方がロボットに対する信頼度が上がり、お店に対する不満も低下したといいます。また2台目のロボットは、謝った後、片づける動作をすることでより好感度が高まることもわかりました。
この実験によって、ロボットも人間の場合と同じように、複数台で謝った方が客の怒りを抑えることができることが確認されたといえます。この知見は今後あらゆるところでロボットが活躍するようになる時代において、ロボットと人間が共存できる調和のとれた社会を構築していくために大きく貢献していくと思われます。
【参考】
■国際電気通信基礎技術研究所プレスリリース
・謝罪するロボットの台数が増えると より受け入れられることを解明 ~人間社会で活動するロボットが失敗した際の振る舞い設計に貢献~
サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。