[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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防災学習館に行こう

(2024年9月01日)

 9月1日は「防災の日」、そして9月1日前後の1週間は「防災週間」です。「防災の日」、「防災週間」は、大正12年(1923年)9月1日に関東大震災が発生したこと、古くからこの時期に災害になるような台風が日本にやってくることから、過去の災害を忘れないように定められました。

 

 「天災は忘れた頃にやってくる」、これは、物理学者である寺田 寅彦(てらだ とらひこ)の名言です。(この言葉はよく使われますが、寺田 寅彦が書いた文章としては、残されていません。)

 多くの天災(自然災害)は、何年かおきにくり返し発生しますが、その期間は非常に長く数十年から数百年にもなります。そのため、人間の記憶、特に体験に基づく経験として残らず、人々が忘れた頃に災害の原因となる自然現象が発生し、災害に至ってしまいます。

 ひんぱんに、大きな地震が発生したり、強力な台風が接近したりすれば、人々の記憶に残りますが、だれもが自然災害にはあいたくないと願っています。

 

防災学習館
左:そなエリア東京、右:東京消防庁本所防災館(地震体験)

 

 全国の「防災学習館」では、災害の原因となる地震や台風が発生した時の様子を体験できます。また、災害発生時の様子をリアルに再現した体験等もあります。

 「防災学習館」でさまざまな体験をして【天災を忘れた頃】を無くしましょう。

 

「防災学習館」の体験をいくつか紹介します。

 

  • 地震の揺れの体験

 多くの学習館では、揺れる台に乗って地震の揺れ(地震動)の体験ができます。震度7を再現できる施設もあり、本物の地震では絶対にあいたくないほどの激しい地震動が体験できます。(年齢制限や年齢に応じた揺れの大きさの体験となる場合があります)

 なお、これらの体験では機械の制約により、体験時間は数十秒から1分程度です。しかし、東日本大震災を引きおこした2011年東北地方太平洋沖地震では、大きな地震動が5分以上も続きました。地震の揺れがいつ収まるかも分からない状況を想像しながら体験すると、もっとリアルな体験になります。

 また、同様の体験ができるように、地震動を発生させる機械をのせた自動車もあり、学校等に来てもらって体験することもできます。

 

  • 強風の体験

 室内で風を起こし、台風が来た時のような強風を体で受けて体験できます。多くの学習館では、風の強さ(風速)が数値で示され、天気予報で耳にする強風域(風速15m/s以上)や暴風域(風速25m/s以上)の風をイメージしながら体験できます。

 

  • 洪水や内水氾濫の体験

 洪水や内水氾濫によって自宅や自動車が水に浸かった場合、ドアには水圧がかかり開けるのが難しくなります。そのようなドアを開ける体験ができます。また、VRゴーグル等を用いて水に浸かった街や室内を疑似体験ができる学習館もあります。

 

  • 災害発生時の避難体験

 大きな地震が発生した後の街の様子等を再現したジオラマにより、アトラクションのように災害時の危険な様子を体験できます。

 例えば、「そなエリア東京」の「東京直下72hTOUR」では、エレベーターの中にいるときに地震が発生し、その後避難通路を通り、地震後の街中のさまざまな危険を体験します。また、タブレットを使ったクイズによりそのときどきに必要な対応が学べます。

 

 災害の原因となる地震や台風は、これまでもくり返し発生しており、私たちが住む街にも必ずやってきます。しかし、しっかりとした備えがあれば、それは災害にはなりません。防災学習館では、地震や台風の時にどう行動すればいいのかを学べます。みんなで楽しく体験し、もしもの時に自分や家族を守る力を身につけましょう!

 

 

【つくば近郊の防災学習館】

 残念ながら、茨城県には常設の防災学習館はありませんが、比較的近くにある施設を紹介します。(体験内容やその実施状況については、各学習館にお問い合わせください。)

 

そなエリア東京(東京臨海広域防災公園)

 本文で紹介した「東京直下72hTOUR」という体験ツアーがあります。また、被災地や避難所の様子を再現したジオラマも展示されています。さらに、首都直下地震発生時等に使われる、国の緊急災害対策本部の代替施設の見学もできます。

 

東京消防庁本所防災館

 地震の揺れや都市型水害(大雨による洪水)の体験、火災時の煙の体験、応急救護(けが人の手当て)などを学べます。また、都内のハザードマップを一同に見られます。

 

埼玉県防災学習センター「そなーえ」

 地震の揺れや最大風速30m/sの風を体験できるほか、浸水した場所を歩く体験もできます。埼玉県で起こった災害についてのクイズや、防災に関する図書もたくさんあります。

 

千葉県西部防災センター

 地震や強風の体験の他、119番通報の体験として、公衆電話、固定電話、携帯電話を使った通報の体験もできます。また、小学生以下を対象にしたスタンプラリーもあり、スタンプを集めると特別なグッズがもらえます。

 

 なお、つくば市内の研究所では、防災に関する展示や体験が、研究所公開とあわせて行われることがあります。

 

長屋 和宏(ながや かずひろ)
国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)企画課 主任研究官
(つくば科学教育マイスター)
私たちの生活を支える道路や橋などの土木インフラの大切さを知ってもらうために、出前講座などを通じて国総研の活動を分かりやすく発信しています。
特に防災分野では、小中学生の皆さんと一緒に、さまざまな視点で勉強しています。