飛行船型水路トンネル調査ロボットの飛行実験に成功
(2020年7月17日)
開発されたトンネルマンボウの全景。
⽔路トンネル内を浮かびながらマルチローターで⾃律的に⾶⾏し、搭載したカメラで壁⾯をチェック。
1cmの傷も⾒逃さない。(写真提供/長崎大学海洋未来イノベーション機構教授 山本郁夫)
長崎大学海洋未来イノベーション機構の山本郁夫教授と西松建設(株)は、共同で飛行船型の水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発。全長約2.6kmのトンネル内を自律的に飛行し、壁面の点検・撮影をする実験に成功しました。
水力発電所には、発電のために水を流す長い水路があります。しかし、建設されてから長い年月がたっている設備が多く、老朽化が進んでいます。また、2016年には震度7を観測した熊本地震もあり、トンネル内の壁面に損傷がないかどうかといった点検が欠かせません。
これまでは、水路トンネルの水を止めて、トンネルに人が入って点検を行っていました。しかし、点検しなければならない距離が数kmと長く、崩れ落ちる危険もあります。そこで、こうした危険を避けるために開発されたのがトンネルマンボウです。
これは、全長3.7m、直径1.2mの飛行船型のもので、複数のプロペラがついていて、水路トンネル内を自律的に飛行し、カメラで全周を撮影することができます。壁面の1cm程度の小さな傷も確認できるそうです。空を飛ぶマルチコプタータイプのドローンに比べて消費電力が少なく、搭載できる重量が大きいことが特長です。
実験は、全長2.6kmの水路トンネルの水を止めて行いました。その結果、トンネルマンボウを安全に自律飛行させて壁面を撮影することに成功。トンネル壁面に貼った小さなバーコードをカメラで読み取る試験にも成功しました。搭載したバッテリーで最長6km飛ぶことが可能だということです。
水力発電の歴史は古く水路トンネルをはじめとした施設の老朽化が進んでいます。そのため、日常的な点検・修理が欠かせなくなっており、この飛行船型無人点検ロボットの活躍が期待されています。
水力発電所の他、農業用水路などさまざまな水路トンネルがありますから、飛行船型点検ロボットの活躍する場はますますひろがりそうです。
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記事執筆:白鳥 敬