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GaNとSiC一体のハイブリッド型トランジスタを開発―電力変換器に用い電力の省エネルギー化に貢献:産業技術総合研究所

(2021年12月10日発表)

 (国)産業技術総合研究所の先進パワーエレクトロニクス研究者グループは12月10日、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスタと、炭化ケイ素(SiC)を用いたPNダイオードとを一体化したハイブリッド型トランジスタを作製し、動作の実証に成功したと発表した。現在のシリコン(Si)製パワートランジスタに代わる次世代の高性能パワートランジスタの開発に道を開く成果という。

 家電製品や産業用機器をはじめ電気エネルギーを使うほとんどの機器に電力変換器が用いられている。電力変換器は半導体トランジスタのスイッチングを利用して、直流・交流変換や電圧変換といった電力の変換・制御を行う機器。地球温暖化対策などで省エネルギー化が急務となっている中で、電力分野における省エネ化の有力な担い手として注目されている。

 この電力変換器の要であるパワートランジスタは現在シリコン製が主流だが、その性能はほぼ限界に近いとされ、GaNなどのワイドバンドギャップ半導体を用いる研究が進められている。

 しかし、GaNトランジスタはスイッチオン状態における導通損失を減らせたり、オン・オフを高速切り替え可能といった特長がある半面、ノイズエネルギーに弱く、わずかなノイズでも素子が破壊されるという弱点があり、普及の妨げになっていた。

 研究グループは、ノイズの逃げ場がないというGaNトランジスタ(高電子移動度トランジスタ)固有の構造上の問題点を、SiCダイオードと一体化することによって解決することを考え、GaNとSiCのデバイス試作を両立できる独自の一貫製造プロセスラインを構築し、ハイブリッド型トランジスタの作製に成功した。

 試験の結果、GaNトランジスタの特長である低いオン抵抗に加えて、非破壊の降伏動作をするトランジスタであることが実証されたという。SiCは熱伝導率がSiの3倍高いため放熱特性が優れるといった特長もある。

 新デバイスは次世代電力変換器の高効率化や信頼性向上をもたらすことから、高い信頼性が求められる電気自動車や太陽光発電パワーコンディショナーなどへの適用が期待されるという。

 今後デバイス製造プロセスのさらなる最適化を進め、実用化につなげたいとしている。