生ごみの発酵残渣(ざんさ)に馬ふん堆肥混ぜ肥料効果6倍に―悪臭も発生しなくなり化学肥料削減に有効:茨城大学
(2022年1月6日発表)
茨城大学農学部附属国際フィールド農学センターの小松﨑将一教授らの研究グループは1月6日、日立セメント(株)、(株)リーフの両社と共同で生ごみをメタン発酵処理すると生じる残渣を悪臭のしない有機質肥料として有効活用できるようにする方法を見つけたと発表した。生ごみのメタン発酵残渣と馬ふんの堆肥とを混ぜるという限定的な利用法ではあるが、野菜の栽培に使ったところ生育が約6倍も良くなるという肥料効果が得られたとしている。
近年、食品廃棄物などをバイオ資源としてリサイクル利用する方法の一つとして、酸素を絶って発酵させメタンガスを得るメタン化の取り組みが各地で進められている。メタンガスはエネルギーとして利用でき、メタン発酵させた後に残る有機質の残渣には窒素などの肥料成分が含まれる。
農林水産省は昨年発表した「みどりの食料システム戦略」で農業への化学肥料投入を今より30%削減する方針を打ち出している。そのためには未利用の有機質資源を高度利用する次世代有機農業技術の開発が必要不可欠とされている。
そこで小松﨑教授らの研究グループは、生ゴミのメタン発酵処理を行っている日立セメントと、馬ふんを堆肥化しているリーフの両社に着目し共同で今回の研究に取り組んた。
日立セメントは、土浦市(茨城県)にある同社の神立資源リサイクルセンターでメタン発酵処理によるエネルギー生産と発酵残渣を堆肥化するリサイクル事業を行っている。一方、リーフは牧草などを主食とする競走馬の馬ふんに植物質の有機物を加え発酵させるという方法で堆肥を製造している。
今回の研究でそれぞれから出ている発酵残渣と馬ふん堆肥とを混ぜ合わせるとメタン発酵残渣に付きものの強い悪臭が大幅に低減され、悪臭の元凶である硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニアなどが検出されなくなることが分かった。
さらに、コマツナを栽培対象にして発酵残渣と馬ふん堆肥とを半量(50%)ずつ混ぜ合わせて施肥したところ5.9倍も生育が向上し著しい肥料効果の改善が認められたという。
また、馬ふん堆肥を50%混ぜると窒素1.9%、リン酸1.8%、カリウム1.7%と肥料3成分のバランスが良くなることも分かった。
競走馬の飼育が盛んに行なわれている茨城県の稲敷郡美浦村(みほむら)では毎日多くの馬ふんが排出されているが肥料としての農家の利用は進んでいないといわれる。今回の研究成果はその突破口になるのではと期待される。