コナラの放射性セシウム濃度調査可能期間を2倍に―きのこ栽培に使う原木(げんぼく)の生産に朗報:森林総合研究所
(2022年1月13日発表)
(国)森林研究・整備機構森林総合研究所は1月13日、きのこ栽培の原木に使われている広葉樹の一種コナラの放射性セシウム濃度の調査可能期間を今の約2倍に伸ばせることが分かったと発表した。コナラの放射性セシウム濃度は幹を切り倒すことなくその年新たに伸びた枝(当年枝)から推定する手法が注目されているが、現在のところその調査可能期間は11月から翌年の3月までと限られている。今回の成果は今の限界を突破できることを突き止めたもので、約2倍の9カ月間に拡大できることを確認したと研究グループはいっている。
きのこは、原木と呼ばれる丸太に種菌(たねきん)を植え付ける方法で栽培され、その原木に広く使われているのがコナラ。
福島県では、阿武隈(あぶくま)地方を中心にきのこ栽培に利用されるコナラの原木生産が盛んに行なわれ、2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故でコナラの原木林が放射性セシウムによって汚染された。
それから10年以上が経過する現在も汚染の影響は続いていて、きのこ原木として使えるコナラの幹の放射性セシウムの濃度は重さ1kg当たり50Bq(ベクレル:Bqは放射能の強さを表す単位)が指標となっており、その指標値以下の原木が得られるコナラの木か否かを簡易に判定できる方法が必要になっている。
そこで開発が進んでいるのが、コナラの幹の放射性セシウム濃度とその年に新たに伸びた当年枝の放射性セシウム濃度の間に一定の関係が成り立っていることを利用してコナラの木を切り倒さずに放射性セシウムの濃度を推定するという方法。
しかし、その推定法で調査が行えるのは冬のコナラの成長がストップしている休眠期の11月から翌年の3月までと限られている。
そこで、研究グループはその調査可能期間の拡大を目指し、きのこ原木の主産地であった福島県田村市の都路町(みやこじまち)で2018年から2020年にかけコナラ当年枝の放射性セシウム濃度の季節変動の調査を行なった。
調査は、原発事故後に伐採されたコナラの切り株や根から新しい芽が出て伸びてできた萌芽林(ほうがりん)と呼ばれるコナラの林を6カ所選び、調査地ごとに5本のコナラを選定して同じ個体から継続的に当年枝を採取し分析して放射性セシウム濃度の季節安定性を調べた。
その結果、8月から翌年の4月まで当年枝の放射性セシウム濃度は安定していることが判明し、「これまで5カ月間に限られていた当年枝の調査時期を9カ月間に拡大可能であることを科学的に初めて示した」と研究グループは述べている。