光合成から非光合成生物へ―進化途上の藻類発見:国立環境研究所
(2022年1月24日発表)
(国)国立環境研究所は1月24日、光と二酸化炭素から独自に有機物を作り出す光合成生物が、他の有機物を取り込んで自らの生命を維持する非光合成生物に進化する途上にある藻類を初めて発見したと発表した。寄生性や病原性の原生生物には光合成能力を失ったものも多いが、これらの生物の進化の理解につながるほか養殖漁業の餌として利用される藻類の培養条件の最適化などにも役立つという。
藻類とは一般に、光合成で自らの生命を維持する生物のうち、種子植物やコケなどの陸上植物を除いたものを指す。ワカメや昆布もその仲間とされるが、国環研はこうした藻類を約1,000種、合計3,000株以上収集・保存している。
国環研は今回、これらのうち淡水から海水までの水域に広く分布する単細胞藻類であるクリプト藻に光合成をする種とその能力を失った種が存在することに注目。光合成から非光合成へ至る進化の謎の解明に取り組んだ。
そのため保存しているクリプト藻の培養株135株から16株を選び、それらの葉緑体のゲノム(全遺伝情報)を解読、比較解析した。その結果、光合成をする種でありながら、葉緑体ゲノムの構造が他の種と大きく変化している種を見出した。このクリプト藻を詳しく調べたところ、光のみで培養できると同時に、光なしでも水中の有機物を吸収して増殖できるものがいることを突き止めた。
このクリプト藻は光合成能力を失う直前の状態にあると考えられたため、さらに詳しく調べた。その結果、一つの細胞が分裂する際に葉緑体ゲノムにコピーミスが生じ、それが次の世代にそのまま引き継がれていることが分かったという。このことがクリプト藻から光合成関連遺伝子、さらには光合成能力を失わせて、外界から他の有機物を取り入れることによって生命を維持する進化につながっているのではないかと国環研は推測している。