マメ科植物の窒素栄養源獲得切り替え戦略にメス―肥料管理の効率化などに寄与へ:筑波大学ほか
(2022年2月10日発表)
筑波大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究グループは2月10日、土壌中に含まれる窒素が多い時には窒素を土壌中から摂取し、少ない時には根粒菌(こんりゅうきん)によって空気中から固定化された窒素を活用するマメ科植物の窒素栄養獲得切り替え戦略の一端を解明したと発表した。マメ科作物の効率的な肥料管理などへの応用が期待されるという。
窒素は生物にとって必須の栄養素で、植物は土壌中に含まれる窒素栄養を根から取り込んで利用している。ただ、マメ科の植物は、根に根粒と呼ばれる器官を形成し、根粒の中に窒素固定細菌の根粒菌を棲(す)まわせており、土壌中の窒素が乏しくなってきた場合には根粒菌が空気中から取り込む窒素に頼っている。
この現象は根粒共生と呼ばれ、窒素栄養の乏しい土壌で植物が生育する上では非常に有用だが、植物は根粒菌に光合成生成物やエネルギー源を提供する必要があるため、土壌中の窒素の含有によって窒素獲得戦略を切り替えている。
研究グループは、マメ科植物ミヤコグサを用いて、窒素栄養の豊富な環境下で植物が根粒共生を止める仕組みを研究し、その制御において中心的な働きをするNLPと呼ばれるタイプの2つの転写因子をこれまでに同定した。そのうちの1つLjNLP4が、硝酸イオンの濃度の変化に応じて根粒形成関連遺伝子の発現を調節し、根粒共生をコントロールしていることを明らかにした。
今回の研究では、高濃度の硝酸イオンを植物が感知すると、LjNLP1転写因子の働きでLjNRT2.1遺伝子の発現が上昇すること、LjNRT2.1たんぱく質を介した硝酸イオンの細胞内への流入でLjNLP4転写因子が核へ移動すること、などを新たに解明、それにより根粒形成に関わるさまざまな遺伝子の発現が調節される可能性を見出した。
また、根粒共生時に働くLjNIN転写因子によってLjNRT2.1遺伝子の発現が減少し、これが硝酸イオンの取り込み量の調節に関連することをつかんだ。
これらの発見は、窒素栄養の獲得源を土壌から根粒にシフトする、根粒共生を行うマメ科植物ならではの生存戦略を示唆しているとしている。