21世紀後半までの降水量変化予測の不確実性を低減―次期IPCC報告書に不確実性幅の低減反映へ:国立環境研究所ほか
(2022年2月24日発表)
(国)国立環境研究所と東京大学、韓国科学技術院の共同研究グループは2月24日、21世紀後半までの降水量変化予測の不確実性を低減することに世界で初めて成功したと発表した。気温だけでなく降水量も予測不確実性を低減できたことから、気候変動対策や影響評価に対してより正確な情報提供が期待されるという。
大気中に放出される温室効果ガスの濃度増加で地球の温暖化が深刻な問題になっているが、気温の上昇だけでなく降水量の増加も脅威をもたらしている。
気温の予測に関しては不確実性を低減させるための研究、すなわち気候モデル間の計算結果のばらつきを低減させる研究が数多く行われ、その成果が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の評価・予測に反映されている。しかし、世界平均降水量変化予測に関しては、これまでその不確実性を低減できていなかった。
降水量変化予測が難しいのは、降水量がエアロゾル(大気汚染物質)排出量の増減に敏感に反応する性質があることによる。19世紀後半から現在までは、温室効果ガスの濃度が増加してきただけではなくエアロゾルの濃度も増加してきたため、この間の長期世界平均降水量トレンドには温室効果ガス濃度増加とエアロゾル排出量増加の両方の影響が含まれている。
ところが、大気汚染対策により、将来はエアロゾル排出量は急速に減少すると考えられており、過去の変化傾向の情報から将来予測の信頼性を評価することは難しいという問題があった。
研究グループは、1980年~2014年の間のエアロゾルの世界平均排出量がほとんど変化ないことに注目して気温の予測不確実性を低減した温暖化の研究成果に着目し、それを降水量に応用した。
すなわち、世界平均エアロゾル排出量が増減しない1980-2014年のモデルの気温変化と降水量変化を観測データと比較し、将来予測の信頼性を評価した。その結果、中程度の温室効果ガス排出シナリオにおいて、67の気候モデルは19世紀後半から21世紀後半に降水量が1.9-6.2%増加することを予測していたが、モデルの温室効果ガスに対する気候応答の信頼性を考慮することで、降水量増加の予測幅の上限の6.2%を5.2-5.7%へ引き下げることができた。また、予測の分散を8-30%減らせることが示された。
これにより、次期IPCC報告書においては不確実性幅の低減が期待されるとしている。