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高濃度のCO2環境で成長を促進する植物遺伝子を発見―有用な遺伝子を自然界から見つけ出す画期的手法を確立:東北大学/九州工業大学/理化学研究所

(2022年4月19日発表)

 東北大学大学院生命科学研究科の彦坂幸毅(ひこさか こうき)教授と大阪公立大学の小口理一准教授(研究当時は東北大学)、九州工業大学の花田耕介教授らの研究グループは4月19日、世界各地から収集したモデル植物のシロイヌナズナから高濃度のCO2環境下でも成長を促進させる遺伝子を発見したと発表した。温暖化が進んだ将来でも、高い収量を実現するイネやコムギなどの作物の開発につながるものと期待されている。

 植物の光合成に欠かせないCO2は、短期的には光合成を増加させるものの長続きしないことが多くの植物で観察されている。今後、温暖化が進みCO2濃度が高くなる環境下でも、作物の収量を減らさずにつくることは食糧難対策として不可欠なテーマでもある。

 野生生物の中には同じ「種」であっても、長い期間、緯度や高度の生育環境の違いによって、それぞれDNAレベルで違った性質を獲得したエコタイプ(環境型)がある。

 植物のモデル生物として知られるシロイヌナズナを世界各地で収集し、比較解析して高濃度CO2環境に適応しやすい遺伝子を探した。

 様々なエコタイプを濃度の違う環境下で育て、成長速度や成長促進率を調べた。なかでも高濃度CO2により強く応答する遺伝子を見つけ出すために、メッセンジャーRNAの網羅(もうら)的発現解析を実施し、応答速度や成長速度の高い遺伝子を43個選び出した。

 一方で、成長促進が低いエコタイプの遺伝子の改変にも挑戦した。ある種の遺伝子の発現を抑えることによって、実際に高濃度のCO2環境で成長が促進された遺伝子を2つ特定することに成功した。遺伝子の発現を抑制することが、なぜ成長を促進するかとの謎はまだ解明できていない。

 こうした遺伝子改変が、イネやコムギなどの他の植物でも効果があるかどうかを次の研究課題にする。

 この研究によって、同一種内の遺伝的変異から有用な遺伝子を見つけ出す新たな手法が確立できた。

 また生物多様性を保全する上で、「種の多様性」だけでなく「遺伝的多様性」も同じように重要だとの理解が進むものと期待している。