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養育行動に不可欠のホルモンを分泌する細胞見つける―マウス(ねずみ)を使った実験で明らかに:理化学研究所

(2022年4月20日発表)

 (国)理化学研究所は4月20日、マウスを使った実験で、仔(こ)を育てる養育行動に必須のホルモンを分泌する神経細胞を見つけたと発表した。アミノ酸9つからなる「オキシトシン」と呼ばれるホルモンを作る細胞で、その合成が欠損されると父親マウスは自分の仔を養育する行動をとらなくなり、オキシトシンを分泌するオキシトシン神経細胞が養育行動に不可欠なことを突き止めた。人間の世界では父親の育児への参加が重要な課題になっている。今回の成果は、父親の養育行動の基盤を解明するのに役立つものと研究グループは期待している。

 養育行動とは、仔を保護して育てる行動の総称のこと。交尾未経験の雄(おす)のマウスは、仔マウスに対し攻撃的な行動をとる。それは、自分の遺伝子を引き継いでいない他者の仔を排除して自分や自分の子孫が生存・繁栄する確率を高めるための行動と考えられている。

 ところが、雌(めす)マウスとの同居を経て父親になる時期が近づくと、仔への攻撃性がなくなり、仔を温めたり、巣から離れた仔を連れ戻したりするなどの養育行動を示すようになる。

 今回の研究は、そうした行動をとる父親マウスの脳内でオキシトシンの分泌が行なわれなくなるとどうなるのかをオキシトシンの合成能を欠損させた「コンディショナルノックアウト雄マウス」という特殊なマウスを新たに開発して行った。実験は、その雄マウスを正常な普通の雌マウスと交尾させて妊娠中から出産5日後までパートナーとして同居させるという方法を使いオキシトシンの効果を調べた。

 その結果、オキシトシン合成を欠損させた父親マウスは、養育行動を示す割合が低下してしまい仔マウスを無視するようになることが分かった。

 そこでさらに、神経細胞を人為的に興奮させたり抑制させたりする薬理遺伝学と呼ばれる手法を使い交尾未経験の雄マウスのオキシトシン神経細胞を人為的に活性化することを行ってみた。

 すると、その雄マウスは、仔マウスに対して攻撃しなくなって、代わりに父親のような養育行動を見せるようになることが分かった。

 「これらの結果はオキシトシン神経細胞の活動、そしてオキシトシンの分泌が雄マウスの養育行動を引き起こすために重要であることを示している」証明だとし、研究グループは今後さらに研究を進めることにしている。