窒化物半導体の高品質薄膜結晶を作る技術を開発―ポスト5G社会の電子・光デバイスなどの実現に貢献:産業技術総合研究所
(2022年4月27日発表)
(国)産業技術総合研究所は4月27日、次世代半導体デバイスの要となる窒化物半導体の高品質な薄膜結晶を作り出せる新手法を開発したと発表した。次世代太陽光発電や高効率光デバイス、次世代高周波デバイスなどの実現が期待されるという。
窒化物半導体は高輝度青色LEDの発明で知られる窒化ガリウム(GaN)や窒化インジウム(InN)などに代表される窒素を含む半導体。バンドギャップが大きい、化学的に安定で物理的に強固、高温にも強く耐環境性が良いなどさまざまな特徴を持ち、次世代の発光・表示素子や高速通信素子、量子素子など多彩な応用が期待されている。
研究グループは今回、窒化物半導体のうちの窒化インジウムと窒化インジウムガリウム(InGaN)を対象とした薄膜結晶の作製に取り組み、実用に耐える高品質結晶を作り出すことに成功した。
従来、これらの結晶の製法として有機金属気相成長法(MOCVD)が知られているが、これまでは転移欠陥が多く、高品質な結晶は得られていなかった。
MOCVDは化合物半導体の構成元素から成る原料ガスを反応室内で加熱分解し、基板上に化合物半導体の薄膜結晶を成長させる技術。産総研は窒素やアンモニアのプラズマを長時間安定に得られる準大気圧プラズマ源を独自開発しており、今回これをMOCVD装置に組み込んだ独自の装置を作製、薄膜結晶の高品質化を実現した。
窒素分子やアンモニア分子を熱分解したりプラズマ化したりすると反応性の高い窒素系活性種ができ、インジウム原子やガリウム原子と反応して結晶が得られる。MOCVDと準大気圧プラズマ源を統合したことにより、高密度の窒素系活性種を試料表面に供給することで薄膜結晶の高品質化に成功した。
今回の成果は、赤色から近赤外域の高効率光デバイスや次世代高周波デバイスなど、カーボンニュートラル社会、ポスト5G社会に欠かせない電子・光デバイスの開発促進につながるとしている。