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“未知の水”発見―多様な自然現象解明に貢献も:東北大学/北海道大学/東京大学/産業技術総合研究所

(2022年5月12日発表)

 東北大学、(国)産業技術総合研究所などの研究グループは5月12日、氷と水の境界面に通常の水とは異なる低密度の“未知の水”を発見したと発表した。高圧下で作った氷と水の界面で2年前に見つけた高密度水と比べても明らかに異なる性質を持つという。さまざまな自然現象と深く関わる水に新たな種類が登場したことで、これまで理解が難しかった現象の解明にもつながる。

 産総研、東北大のほか北海道大学、東京大学の研究者で構成した研究グループは、水を-10℃、1,056気圧以上の低温高圧下に置いた後に減圧して、氷の結晶が成長し、その後に融解していく様子を顕微鏡で詳しく観察した。

 その結果、減圧によって成長する氷と水の境界面に、周囲の水とははっきりと分離した液体の膜や微小な液滴ができていることを見出だした。また、加圧によって融解する氷の界面には、やはり周囲の水に対してはっきりとした界面を持ち、周囲の水とは分離した微小な液滴ができることを発見した。

 そこでこの液滴の性質を詳しく調べたところ、①通常の水より明らかに低密度、②液体の流れやすさの指標となる特徴的速度(表面張力と粘性の比)がおよそ毎秒20mで、通常の氷と空気の界面にできる極薄の水の膜の速度(毎秒2~0.2m)とは大きく異なることなどを突き止めた。研究グループは2年前に高圧下で通常の水と混ざり合わない“第1の未知の水”を発見しているが、その水の流れやすさがおよそ毎秒100mだったのに比べて大きく異なっていた。

 水の物性は地球におけるさまざまな自然現象を支配し、宇宙においても天体の地質現象や有機化合物の生成などに直接かかわっている。そのため研究グループは、今回“第2の未知の水”が発見されたことで「これまで理解できなかった水の関わる現象の解明に分野を問わず貢献する」と期待している。