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トンガの大噴火で発生した津波の伝播メカニズムを解明―火山噴火を考慮した津波の研究が必要に:防災科学技術研究所ほか

(2022年5月13日発表)

 (国)防災科学技術研究所と東京大学地震研究所は5月13日、共同で今年1月に南太平洋のトンガ諸島で起こった海底火山の大噴火によって生じた地球規模の津波の伝播メカニズムをシミュレーションにより解明したと発表した。「ラム波」と呼ばれる高速の大気の波が大噴火で発生し、その大気の波の伝播により生じた通常より速く伝わっていく津波の波形データをシミュレーション実験により再現した。今後の津波研究では地震による津波発生の研究だけでなく火山噴火も考慮しなければならないことが実証されたといっている。

 トンガ諸島は、南太平洋の真ん中にある170余りの島々。その海底にある火山が2022年の1月15日に大規模な噴火を起こして地球規模の津波が発生し、およそ8,000km離れている日本では不思議な現象が生じた。

 大噴火で発生した津波は、日本の太平洋側の沿岸各地で観測され、潮位上昇があったが、第1波にあたる最初の潮位変化がキャッチされたのが通常の津波の到達予測時間より2~3時間以上早かった。この現象が話題となり、専門家が何故到達が早かったのか原因を調べたところ、出された結論が大噴火で生じたラム波の影響だった。

 ラム波は、空気中を物凄いスピードで伝わっていく大気の波の一種。伝わる速さは、音速に近く、一般的な津波の伝播速度よりずっと速い。その高速のラム波の作用により通常の津波より伝播速度の速い津波が大噴火によってでき世界各地に予想外のスピードで伝わったため日本の太平洋沿岸でも到達予測よりずっと早く潮位上昇が観測されたというのである。

 そこで、今回の研究は、噴火に伴い生じたラム波という大気の波による影響によって発生する津波をシミュレーションし、通常の津波より速く伝播する部分の波形の観測データを再現した。

 その結果、噴火による空気の振動で生じた海面近くを高速で進むラム波によって海水が一気に持ち上げられ、その持ち上げられた海水が隆起した波となって音速に近い秒速約300mで伝播し、通常の津波はそれよりずっと遅い秒速200~220mの速度で進むという解析値がシミュレーションにより得られたとしている。

 研究チームは、このような結果が得られたことから今後の津波研究では「地震による津波発生とは異なる火山噴火を考慮した新しい津波研究が必要」と強調している。