沖縄特産パイナップルのゲノム解読に成功―新品種開発に朗報、9億の塩基対配列明らかに:かずさDNA研究所/日本大学/沖縄県農林水産部農業研究センター/農業・食品産業技術総合研究機構
(2022年5月17日発表)
パイナップル「ゆがふ」
(写真提供:沖縄県農林水産部農業研究センター)
(公財)かずさDNA研究所、(国)農業・食品産業技術総合研究機構などの共同研究グループは5月17日、パイナップルのゲノム(全遺伝情報)を解読したと発表した。「ゆがふ」と呼ばれる沖縄産の品種を構成している約9億の塩基対の配列を明らかにした。
パイナップルは、英語の「パインアップル(Pineapple)」を発音し易くした呼び名。果実の形が松かさ(パイン)、味が甘酸っぱくてリンゴ(アップル)に似ているところから英語名は付けられたといわれている。
原産地は南米のブラジルで、我が国には江戸時代の末期にオランダ商人が持ってきた。だが、国内唯一の栽培適地といえる沖縄で作られようになったのはずっと後で、1930年頃のこと。
その沖縄では、近年生食用パイナップルの生産が進み、県を挙げて更なる生産振興に取り組んでいることから、研究グループはゲノム情報をもとにパイナップル育種の高度化を目指そうと今回のゲノム解読を行った。
研究には、日本大学、沖縄県農林水産部農業研究センターも参加し、同研究センターの名護支所が開発した「ゆがふ」を解読の対象にした。
「ゆがふ」とは、豊かで平和に、を意味する沖縄の方言。母親(種子親)から遺伝した約4億6,000万の塩基対配列と、父親(花粉親)からの約4億4,000万塩基対、両方合わせて約9億塩基対の配列を明らかにした。
ゲノム情報を利用しないこれまでの育種法では、新品種を開発するのに10年以上かかるともいわれており、沖縄県でこれまでに育成された生食用のパイナップルは10品種に達していない。今回のゲノム情報を利用することで国産パイナップルの育種効率が飛躍的に向上すると研究グループは見ている。
また、今回の成果を利用すれば市場性がより高い新品種を作ることも期待できるという。
市場で見かける生食用パイナップルの果肉は黄色をしている。その色は、黄色色素のカロテノイドによるもので、黄色が濃いほど市場性が高いとされている。ところが「ゆがふ」の果肉の色は白色。それが今回の成果の活用で濃い黄色にできるかもしれないと期待がかかっている。