セルロースの高効率分解技術―廃棄物再資源化に有望:国際農林水産業研究センターほか
(2022年6月2日発表)
新たに発見された、サーモブラチウム・セレラA9菌
©国際農研
(国)国際農林水産業研究センターとタイのキングモンクット工科大学は6月2日、廃棄食品や農産廃棄物、紙ごみや古着などに含まれるセルロースを再利用可能な糖に効率よく分解する技術を開発したと発表した。高価な酵素を使わずに細菌を培養するだけで、日々大量に消費・廃棄されるセルロースを低コストで再資源化できる。資源・エネルギーの有効利用に役立ち、環境負荷の低減につながる。
セルロース廃棄物は農作物の収穫時や加工時に大量に出るほか、食品廃棄物や紙ごみ、繊維廃棄物に大量に含まれ、その焼却処理などによって温暖化の大きな原因にもなっている。研究グループは、2種類の細菌を一緒に培養することで、これらの廃棄セルロースをエタノールや油脂、アミノ酸、プラスチック原料などさまざまな化学製品の原料に転換・再利用する道をひらいた。
研究グループは今回、廃水汚泥から新たな好熱嫌気性菌「好熱嫌気性サーモブラチウム・セレラA9菌」を発見、これをセルロース高分解菌「好熱嫌気性セルロース高分解菌(クロストリジウム・サーモセラム)」と一緒に培養したところ、セルロースを効率よく糖(グルコース)に変換できることが分かった。
セルロース高分解菌は一般にセルロースを糖化はするものの全て自ら消費してしまうため、再資源化して人間が利用できる糖は残らない。これに対し、新発見の好熱嫌気性菌(A9菌)は自らセルロースを糖化することはできないが、できた糖の消費を防ぐ酵素を作ることが分かった。そのため、両方の細菌を一緒に培養することで、セルロースから人間が利用可能な糖を直接得ることができるようになるという。
セルロースからバイオ燃料や化学製品を作り出すには、従来は高価なセルラーゼ酵素を必要とすることが実用化の大きな障害になっていた。これに対し、新技術は2種類の微生物を一緒に培養するだけで、毎日大量に廃棄されるセルロースをエタノールや油脂、アミノ酸、プラスチック原料などさまざまな化学製品への変換に道をひらく。