量子ビットの状態読み出し向け高速電流計測回路を開発―誤り訂正型の汎用(はんよう)量子コンピュータの開発に弾み:産業技術総合研究所
(2022年6月14日発表)
(国)産業技術総合研究所は6月14日、汎用(はんよう)の量子コンピュータの開発に向け、半導体スピン量子ビットの状態読み出しに必要な小型高速の電流計測回路を開発したと発表した。計測を従来に比べて100倍高速化することに成功、目標となっている誤り訂正型の汎用タイプの量子コンピュータの開発に弾みがつくとしている。
100万個超もの量子ビットの集積から成る量子コンピュータの実用化には、演算の誤りを訂正しながら演算を実行する誤り訂正型の汎用量子コンピュータの開発が望まれている。
それぞれの誤り訂正には量子ビットの状態読み出しが伴うため、高速な読み出し動作が求められるが、これまでは冷凍機内の量子ビットから室温下の測定器まで長い配線が必要で、読み出しに1ミリ秒程度を要し、電流の読み出し速度が遅いという問題があった。
研究グループは今回、集積化が可能な半導体プロセスで読み出し回路を作製し、量子ビット近くの極低温下での動作を可能にした。これにより、電流の計測が冷凍機内で行え、量子ビット・電荷センサーとの配線が大幅に短縮され、読み出しの高速化が実現した。
電流計測回路のチップを4K(ケルビン、-169℃)に冷却して動作を検証した結果、従来の室温での計測方式に比べ、読み出し速度を100倍に高速化できることが確認されたという。
開発した量子ビット読み出し向け電流計測回路は、将来の大規模量子コンピュータを実現する基盤技術の一つとしての応用が期待されるとしている。