回転円盤銀河の誕生の最初期段階捉える―132.8億光年かなたの銀河に回転の兆候発見:早稲田大学/筑波大学ほか
(2022年7月1日発表)
早稲田大学と筑波大学、国立天文台、四国学院大学の共同研究グループは7月1日、132.8億光年かなたの銀河MACS1149-JD1が回転している兆候を発見したと発表した。これまでに見つかった中で最遠方の回転円盤銀河で、その回転運動はまだ弱々しく、回転円盤銀河誕生の最初期段階を捉えたと考えられるという。
太陽系が所属する天の川銀河は円盤状をし、回転運動している。回転速度は秒速220kmもあり、この速さによる遠心力と重力が釣り合って円盤の形が保たれている。
宇宙は138億年前のビッグバンで誕生したと考えられているが、最近の観測によると、120億年以上前の宇宙に巨大な回転円盤銀河や渦巻き銀河が見つかっている。また、130億年ほど前の宇宙では、ある程度の回転運動が見られるものの、逆に回転運動がほとんど見られないものも見つかっている。
銀河は、いつどのようにして生まれ、進化したのか?最初期の銀河の運動を調べることは銀河の形成過程の理解につながることから、研究グループは人類が知る最も遠い銀河の一つであるMACS1149-JD1という銀河を、アルマ望遠鏡で観測し、回転運動などを調べた。
アルマ望遠鏡は130億光年以上も遠くにある天体が放つ電波を捉えられる、パラボラアンテナ計66台の結合から成る巨大電波望遠鏡で、南米チリの標高5,000mの高地に国際協力で建設され、2011年に運用を開始した。
今回の観測・研究の結果、132.8億光年かなたのMACS1149-JD1に回転運動の兆候が捉えられた。その回転速度は秒速50kmほどで、のちの時代の銀河や銀河系の回転運動に比べて弱々しかった。銀河の直径は約3,000年光年で、質量は太陽の約10億倍と推定された。
こうした結果から、MACS1149-JD1はビッグバン後2.5億年頃に形成された銀河で、観測時点(5億年頃)には、回転円盤を作り始めた段階にあるとみられるという。つまり、今回の観測は銀河の回転運動が発達していくその始まりを捉えたと考えられるとしている。
MACS1149-JD1の想像図MACS1149-JD1の誕生の様子のイメージ ©ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)(早稲田大学Webサイトより)