食物連鎖と放射性セシウム―ガラス状微粒子がカギ:国立環境研究所ほか
(2022年7月14日発表)
(国)国立環境研究所、電力中央研究所、(国)農業・食品産業技術総合研究機構などの研究チームは7月14日、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故で環境中に大量に放出された放射性セシウムが水生昆虫やそれを餌とする魚や鳥類などに取り込まれる仕組みの一端を解明したと発表した。放射性セシウムがガラス状に固まった極微の粒子を発見、生物の食物連鎖の中でその粒子がどう移動するかが重要なことを突き止めた。
福島県環境創造センター、日本原子力研究開発機構、福島大学、東京大学も加わった研究チームは、福島県内の河川で採取した水生昆虫「ヒゲナガカワトビケラ」の放射性セシウム濃度を個体ごとに測定した。その結果、特に高いセシウム濃度を示す個体から、セシウムを含む大きさ0.1~10μm(マイクロメートル、1μmは1,000分の1mm)程度のガラス状粒子「セシウムボール」を発見した。
ガラス状粒子は、この水生昆虫が餌とする藻類などからも見つかっている。ただ、ガラス状粒子は水に溶けないため、水生昆虫をエサとして魚が体内へ取り込んでも「放射性セシウムが筋肉などの体組織に取り込まれるリスクはほとんどない」と、研究チームはみている。そのため、生物試料中にセシウムボールが含まれている場合は、生物の放射性セシウム濃度を過剰に見積もってしまう可能性があると注意を促している。
今後、セシウムボールを含めた渓流中での放射性セシウムの動きをより詳しく調べることで、水生昆虫やそれを餌とする魚の放射性セシウム濃度の将来予測の精度をより確かなものとすることにつなげられると、研究チームは期待している。