イモリの肢再生のナゾ―基本原理を解明:筑波大学ほか
(2022年8月1日発表)
筑波大学と名古屋大学は8月1日、両生類のイモリが肢を切られても元通りに再生する際の基本原理を解明したと発表した。再生能力は肢の筋繊維にもともと備わっているが、その能力はえらを持つ幼生から肺で呼吸する成体に変態すると共に、成体の半分程度の体長にまで成長するという二つの条件が満たされて初めて発揮されることを突き止めた。将来の再生医療の技術開発にも役立つという。
イモリは幼生から変態して成体になると、肢を切断しても筋繊維の一部の細胞が分離してどのような器官・臓器にもなれる能力を持つ未分化な単核細胞になるという脱分化を起こし、新たな肢の筋を作り出すことが知られている。そこで筑波大学の千葉 親文(ちば ちかふみ)教授と名古屋大学の竹島 一仁(たけしま かずひと)准教授(研究当時)らは、こうしたイモリの肢の筋の再生能力がどのような条件下で発揮されるのかを詳しく調べた。
実験では、イモリの受精卵に遺伝子を導入する独自技術とゲノム編集技術などを活用、再生中の肢の内部でも筋繊維や脱分化細胞の様子を観察できるようメラニン色素を合成できないイモリを作った。そのうえで、このイモリの幼生(齢:2~3ケ月、全長:約3㎝)と幼体(齢:5~6ケ月、全長:約3~4㎝)の前椀を中央で切断、前腕が再生する過程で筋繊維がどう変化するかを詳しく観察した。
その結果、①イモリの筋繊維細胞はもともと脱分化して再び増殖する能力を持っている、②その能力が発揮されるには、体の変態と体の大きさが標準的な成体の約半分にまで成長することが必要、という二つの要因の組み合わせが欠かせないことが初めて明らかになった。
今回の成果について、研究チームは「イモリに匹敵する高度な脱分化が他の四肢動物で確認できない原因が、細胞自体の性能の違いなのか、それとも他の四肢動物の細胞にも脱分化能力は潜在しているが、生涯にわたって抑制されているためなのか、という根源的な問題を提起する」と話している。