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アミロース含有率の高い水稲の新品種を開発―西日本での栽培に適し、高収量で、米粉麺作りに向く:農業・食品産業技術総合研究機構

(2016年10月26日発表)

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「ふくのこ」の籾および玄米(左から、ふくのこ、ヒノヒカリ、ホシユタカ)©農研機構西日本農業研究センター

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は10月26日、西日本での栽培に適したアミロース含有率の高い水稲の新品種を開発したと発表した。

 福山市(広島県)に本所がある同機構の西日本農業研究センターが育成に成功したもので、既に今年度から岡山県内で栽培が始まっている。西日本に向いた栽培し易い高アミロース品種はこれまで無かったが、この新品種開発で高アミロース米の栽培がほぼ全国で行えるようになった。

 アミロースは、デンプンの一成分。デンプンは、ブドウ糖が直鎖状につながったアミロースと、分枝状につながったアミロペクチンからできている。

 炊いた米の粘りは、アミロースの含有率が低いほど強くなる。その含有率は、日本の一般的な米で15%から20%程度、粘りの強い品種で10%程度、もち米にはアミロースが含まれていない。

 新品種は、アミロース含有率が27%前後と高く、炊飯時の粘りが弱く麺作りに適しているという。

 米粉麺は、小麦粉麺と一味違う食感がある。その一例が人気のあるベトナム料理のフォー。フォーは、平たい米粉麺でできている。

 高アミロース米は、米粉麺作りに適し、北陸地方や北海道などで栽培されている。しかし、それらの品種は、瀬戸内海沿岸など西日本の温暖な地域には向いていない。

 新品種は、高アミロースで製麺適性に優れる「新潟79号」と多収で縞葉枯病に抵抗性を持つ「関東229号」を交配して育成した。

 名称は、「ふくのこ」。九州を中心に四国・中国地方や近畿地方など西日本で広く栽培されている水稲の「ヒノヒカリ」と収穫時期がほぼ同じなため「ヒノヒカリ」の作付け地帯で栽培でき、「ヒノヒカリ」より倒れ難く、縞葉枯病に抵抗性があり、いもち病にも強いといった特徴を持つ。同機構は、2012年から2015年にかけ福山市で新品種の栽培を行っているが、これまでの高アミロース品種の「ホシユタカ」より3割ほど多収になることを確認している。

 同機構は「(新品種の)『ふくのこ』の育成により、西日本でも米粉麺などの高アミロース米を使った6次産業化が可能になる」といっている。

 農林水産省は、農業や水産業などの一次産業が食品加工・流通販売まで業務を拡げて経営の多角化を図ることを推進しており、これを農林漁業の6次産業化と呼んでいる。