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シカの効果的な捕獲が農林業被害を軽減する―小エリアごとに捕獲目標を決める手法が全県で効果:森林総合研究所

(2022年9月6日発表)

 (国)森林総合研究所と熊本県林業研究・研修センターは9月6日、熊本県全域で実施した積極的なニホンジカ(以下シカ)の捕獲が農林業被害の軽減に大きな効果があったと発表した。全県レベルでの広域調査・研究は世界でも例がなく、国内各地で増え続けるシカの被害対策に有効になりそうだとみている。

 シカの増えすぎによる農林業被害は深刻で、全国の被害総額は年間100億円以上とみられる。毎年60万頭ものシカが捕獲されているが、捕獲の方法や頭数によってどんな効果が出るかはわからなかった。

 研究グループは、熊本県内を25km2ごとに区分けした計184エリアについて、シカの総捕獲数と樹皮が剥がされた食害本数、シカの生息密度の増減傾向との関わりを、2009年から2017年にわたって調査した。

 その結果、シカ捕獲量の多いエリアほど農林業の被害は減少した。特に県南部でたくさん捕獲したエリアはシカの生息密度も減少していた。捕獲量が少ない県北部などでは、シカが増加し被害も増えていた。

 概ね9年間の捕獲総数が1,000頭程度になると被害が減少する傾向が出た。だが森林環境や元のシカの生息数によっても効果は違ってくる。

 シカを多数捕獲すれば農林被害が減るというのは、しごく当たり前のようにみえるが、一部の地域だけでたくさん捕獲しても県全体としては効果が認められにくいケースがあった。

 捕獲計画の策定にあたって適切なエリア分けをし、そのエリアごとに必要な捕獲数を決める方法が必要となる。これまでは25km2の広さがエリア管理の最小単位として適切だったとしている。

 今後は25kmよりさらに広いエリアでの捕獲の効果がどのように出るかを調べることにしている。