アジアの伝統野菜「ヒユナ」の遺伝的多様性を初めて解明―栄養価、食味、収量の向上を目指しヒユナの品種育成に期待:国際農林水産業研究センターほか
(2022年9月28日発表)
世界蔬菜センターで栽培されているヒユナ遺伝資源の一例
葉の色、形状、背丈など、多様な表現型を示す。世界蔬菜センターでは、遺伝資源465種類全てが栽培されている。
©国際農研
(国)国際農林水産業研究センターの星川 健研究員、筑波大学生命環境系の吉川 洋輔准教授、かずさDNA研究所の白澤 健太主任研究員らの研究グループは9月28日、東南アジアの伝統的な野菜「ヒユナ」の遺伝的多様性を初めて解明したと発表した。今後、栄養価や食味、収量などを改良するための育種技術に応用し、世界の食糧安全保障にも貢献したいとしている。
ヒユナは南アジア原産で、黄色や紅色、紫色など強烈な色彩の葉が目立つ一年草植物。日本では観賞植物のハゲイトウとして知られる。しかしケイトウ属ではなくヒユ属の仲間。
ベトナム、インドネシアなどの途上国では重要な食用作物になっている。高温や干ばつ、病害、塩害などの環境ストレスに強く、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど栄養が豊富で、食物繊維を大量に含んでいることから、代表的なスーパーフードとして世界保健機関(WHO)から認定されている。
先進国ではコメ、コムギ、トウモロコシ、大豆などの主要作物に過度に依存していることから、ヒユナに対する関心が薄く、育種研究が遅れていた。
国際農研は、途上地域の健康増進や所得向上のための育種を目指し、筑波大学、世界蔬菜(そさい)センター(台湾)、かずさDNA研究所と共同でヒユナに注目し、多様性や栄養価、食味に関する研究を3年前から続けている。
研究グループは、世界蔬菜センターと米国農務省のジーンバンクに保存されているヒユナの遺伝資源465種類について、ゲノム全体の遺伝的多様性と集団構造を解析した。
その結果、ヒユナの遺伝資源465種類のうち、ゲノム塩基配列中の一塩基が変異した一塩基多型(SNP)を1万509個見つけ、さらに品種育成に必要な欠損のないSNPマーカー5,638個を見つけた。また遺伝的多様性を代表する105種類のコアコレクションも作った。
SNPマーカーとコアコレクションを使うことによって、高い栄養価や良好な食味と多収量をもつ育種の開発や新品種作りへの道が開かれる。熱帯・亜熱帯地域での持続可能な野菜生産に寄与できるとみている。