成形性、放熱性、耐食性に優れるマグネシウム合金を開発―銅とカルシウムをごく微量添加し実現：産業技術総合研究所ほか
(2022年9月30日発表)
（国)産業技術総合研究所は9月30日、成形しやすく放熱性や耐食性に優れる新たなマグネシウム合金を開発したと発表した。ごく微量の銅とカルシウムを添加し、これまでのマグネシウム材料の特性を大きく改善した。輸送機器や電子機器のケーシングなど、高い成形性、耐食性、放熱性が必要とされる部材に有用という。
マグネシウム合金は母材のマグネシウム金属にアルミニウムや亜鉛、あるいはその他の元素を添加物として加えた合金。軽量で、機械特性や耐食性があり、主にアルミニウム、亜鉛を加えた汎用マグネシウム合金が一般に流通している。
ただ、汎用マグネシウム合金はアルミニウム合金に比べると室温での成形性が劣り、適用範囲が限定的である。また純マグネシウムは放熱性、生体親和性、制振性に優れているものの、合金にすると機能性が大きく低下するなどの問題を抱えていた。
このため、機能性部品の分野開拓において、純マグネシウムの優れた特性を保ちつつ、室温成形性を改善する技術の開発が求められていた。
この問題に取り組んできた産総研のグループは、1年ほど前にマグネシウムに亜鉛と微量のカルシウム等を添加した合金板材が優れた室温成形性と機械的特性を示すことを企業と共同で発見した。しかし、熱伝導率などの機能性が純マグネシウムに比べ若干劣ることから、添加元素の新たな組み合わせを探索し、今回、マグネシウムにごく微量（0.1wt%未満）の銅とカルシウムを添加すると材料の特性が大きく改善することを発見した。
高純度の金属マグネシウムに銅とカルシウムを添加した鋳造材を作って圧延成形し、マグネシウム合金板材を作製、その際、カルシウム濃度を変えて室温成形性を評価したところ、銅0.03％、カルシウム0.05％を添加した合金において室温成形性の劇的な向上が認められた。
また、カルシウム濃度を変えるなどして他の特性も調べたところ、汎用マグネシウム合金よりも優れた耐食性と、アルミニウム合金に迫る放熱性が認められたという。
今回の研究では、名古屋大学と共同で優れた室温成形性の発現メカニズムを理論的に明らかにした。新合金は輸送機器筐体（きょうたい）、電子機器筐体など、高い放熱性が必要とされる機器の製造に役立つことから、今後用途の拡大なども目指し、多くの企業と連携を進めていきたいとしている。
