アフリカ向けの新有機肥料を開発―ブルキナファソの未利用資源使う:国際農林水産業研究センターほか
(2022年10月20日発表)
(国)国際農林水産業研究センター(国際農研)は10月20日、アフリカのブルキナファソ環境農業研究所、ジョセフ・キゼルボ大学と共同で、化学肥料に匹敵する増収効果が得られる新しい有機肥料を開発したと発表した。ブルキナファソに大量に埋蔵されている低品位のリン鉱石など未利用の資源が原料で、容易に作れることから、肥料が入手できずに困っているブルキナファソの小規模農家などへの普及が期待される。
ブルキナファソは、アフリカ南部のサブサハラ・アフリカと呼ばれている地域に位置する内陸の農業国で、人口は約2,100万人。世界の5大穀物の一つといわれるソルガムが多く栽培されているが、サブサハラ・アフリカ地域の農家は大多数が小規模で、農業生産性アップに有効な化学肥料の使用量は世界平均のわずか10分の1に留まっているといわれている。
ところが、ブルキナファソには、肥料の3要素の一つであるリンの鉱石が1億tも手つかずのまま埋蔵されている。その多くは、不純物を多く含んでいることから低品位鉱と呼ばれ工業用のリン資源としてはこれまで注目されてこなかった。
研究グループは、ソルガムの栽培で発生する多量の茎など現在は利用の道がないことから廃棄物になっている部分と、未利用の低品位リン鉱石に注目し、リン鉱石に含まれるリン分を可溶性にする土壌微生物を豊富に含む土壌(根圏(こんけん)土壌)を加えることによって発酵させることに成功、肥料に変える方法を見つけた。
作り方は、ソルガム残渣100㎏に、リン鉱石と根圏土壌をそれぞれ10㎏、発酵を促進するため尿素を460g加え、含水率を65%程度に調整して2週間ごとに攪拌(かくはん)しながら180日間発酵を続けるというもので、特別な機材は一切いらず、現地の農家が入手できる材料で作れる。農作業を行うことのできない乾季の間に完熟させておいて次年度の雨季に土壌に散布するようにして使う。
この新有機肥料を研究グループは「リン鉱石土壌添加堆肥」と呼び、ブルキナファソの中央台地でソルガム栽培を対象に施肥効果を調べる実証実験を行っているが、化学肥料に匹敵する増収効果を得ている。
こうした結果が得られたことから研究グループは「現地農家に新たな選択肢を提供することになり、土壌肥沃度(どじょうひよくど)を改善する有効な技術になり得る」と見ており、国際農研は「世界的な化学肥料価格の急騰に対する有効な技術になることが期待される」とコメントしている。