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小惑星リュウグウの試料の分析結果を2件発表―希ガスの同位体組成、隕石CIコンドライトと似ている:宇宙航空研究開発機構

(2022年10月21日発表)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月21日、小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料の分析結果を2件発表した。1件は、世界で初めて気体のまま地球に持ち帰ったリュウグウのガス成分の質量分析結果。もう1件は、リュウグウの表層および地下物質試料の希ガスと窒素の同位体組成の測定結果。希ガスの同位体組成は最も始原的な隕石とされるCIコンドライトのものと似ていることなどが分かったという。

 小惑星探索機「はやぶさ2」は2020年12月6日に小惑星リュウグウで採取した試料を収容したコンテナをオーストラリア・ウーメラ地域に着陸させ回収。日本から現地に運び入れたガス採取・分析装置を用いてガス成分を抽出・採取・質量分析した。その後、採取したガスを国内外の研究機関に配布し、ガス成分の精密な同位体分析を行った。

 それらの分析の結果、回収されたコンテナガスは太陽風と地球大気との混合であった。地球大気は地球帰還後の混入で説明できることが判明、太陽風は、リュウグウ試料の表面が剥離した際に遊離した太陽風がコンテナガスとして含まれている可能性が最も高いことが分かった。

 質量分析では、水素、ヘリウム、窒素、アルゴンがコンテナガスの主要成分であることが分かった。同位体を詳細分析したところ、質量数3のヘリウムが地球大気と比べて100倍多かった。またネオンも同位体組成が地球大気とは異なっていた。

 リュウグウに含まれる含水鉱物の脱水で発生する水蒸気などは非常に高感度な分析装置を用いてもコンテナガスからは検出されなかった。

 リュウグウの表層および地下物質試料の希ガスと窒素の同位体組成を測定したところ、リュウグウには太陽系形成時の希ガスが含まれており、その量はこれまで報告されているどの隕石よりも多いことが分かった。その同位体組成はCIコンドライトのものと似ていた。

 太陽系形成時の始原的ガス以外にも、銀河宇宙線によって生成された希ガスと太陽風起源の2種類の希ガスが含まれていた。多くのリュウグウ試料に含まれる太陽風起源ガスはわずかな量だった。