温暖化には高温に強い水稲の開発が必要―2040年代までに今より1~2℃高い品種がいる:国立環境研究所ほか
(2022年10月27日発表)
(国)国立環境研究所と茨城大学、茨城県は10月27日、地球温暖化に伴う水稲の品質低下を防ぐには今後10年ごとに高温耐性を0.5℃ずつ高めていく必要があることが分かったと発表した。温暖化による水稲の品質低下は、全国的な大きな問題で、なかでも深刻化が心配されているのが「白末熟粒(しろみじゅくりゅう)」と呼ばれる低品質米が増えること。すでに多くの都道府県でそれが問題化しており、今より1~2℃高温耐性の高いコシヒカリを2040年代までに開発・導入する必要があるといっている。
白未熟粒は、白く濁った米粒のこと。乳白米とも呼ばれる。出穂後の気温が高いと、デンプン粒の蓄積が十分に行われなくなって白未熟粒の発生が増える現象が生じ、味の低下が起こる。
地球温暖化では、この白未熟粒による米の品質低下をいかにして防ぐかが大きな課題になると見られ、農林水産省が行った調査ではすでに3分の2の都道府県で白未熟粒の発生が問題になっていると報告されている。
しかし、水稲の新種開発には10年単位の期間を要すとされ、開発された品種を普及させるのにも時間がかかる。10年後、20年後までにどの程度高温耐性を上げなければなければならないのか、その検討の材料となる科学的情報がまだ揃っていないといわれている。
そこで、研究グループは、白未熟粒の発生を抑えるためには、いつまでに(When)、どの程度(How)高温耐性をアップした水稲を開発・導入する必要があるのかを最も広く普及している水稲の「コシヒカリ」を対象に明らかにすることを目指した。
研究では、気温を入力すると水稲の白未熟粒の発生確率が仮想的に計算できる予測モデル(数理モデル)を先ず構築した。そして▽パリ協定で目指している気温上昇を2℃以下に抑える温室効果ガス排出量が最も少ないシナリオと、▽温室効果ガス排出が多く気温上昇が最も大きいシナリオの両方について、2050年までの白未熟粒発生率を計算で予測することを行った。
その結果、2020年代には0℃から0.5℃、2030年代には1℃、2040年代には1℃から2℃今より高い高温耐性を持った新種を開発・導入しなければならないことが分かったという。
今後10年につき0.5℃の速さで高温耐性の高い水稲を開発・導入する必要があるということを計算から明らかにしたのは、これが初めてという。
ただし、実際にこの開発・導入速度を技術的に実現することが可能であるのかどうかはまだ分かっていないとしている。